新東名を新機軸に 
「内陸フロンティア」とは、静岡県内陸部を通過する新東名高速道路などの沿線に帯状に広がる地域のことを指す。 

内陸高台部の162キロに及ぶ新東名は、首都圏・中部・関西を結ぶ。この特性を生かし、有事には、代替路・緊急輸送の機能を備えた「命の道」の役割を担うことが注目される。新東名の周辺地域は、人々の移住空間や企業の新規進出空間として大きな可能性を持ち、「新国土軸」としての展開が期待されている。 

「内陸フロンティア」構想には、主に3つの基本戦略がある(図2)。1つは津波の心配のない内陸部や高台部に先進地域を築く「内陸部のイノベーション(革新)」。内陸部の地形特徴を最大原に活用し、新しい産業集積をはじめ、新エネルギーの導入に加え、新東名高速道路の利便性を活用し、物流関連会社などに企業立地の促進をする。 

2つ目は沿岸部を中心とした都市部を防災・減災に対応した地域に再生する「沿岸・都市部のリノベーション(再生)」。河川、海岸などの地震、津波対策の強化をする一方、沿岸部から内陸部への企業の移転に伴い、工場跡地などを活用した農産物の生産向上を目指す。 

最後の3つ目は、その両地域間の連携と相互補完を促進する「多層的な地域連携軸の形成」。新東名高速道路や伊豆縦貫自動車道などの高規格幹線道路を軸に、内陸と沿岸部を結ぶ交通のネットワークを整備し、産業の競争力に寄与する物流のネットワークの強化を推進する。 

具体的には、「内陸のフロンティア」を拓くために県と市町による協議会の設置や、中央新幹線が開通する2027年ころまでの中長期的な地域デザインとなる全体構想を策定する。また、農地転用などの規制の特例措置や財政・税制・金融の支援措置などの総合特区制度を活用した地域づくりに市町や関係団体と共同で取り組む。実際に今年から、三島市、富士氏、吉田町など、地域を総合特区とし11て選出し、物流産業の集積や農業振興を目指している。 

取り組みはまだスタートしたばかりだが、震災から内陸の高台を生かした復興を目指す東北や、防災・過疎化地域の活性化を目指す日本全体のモデルとして注目されている。