整備場所について、次回会合で意見書としてまとめる

東京都は10日、「首都災害医療センター(仮称)基本構想検討委員会」の第7回会合を開催した。現地建て替えか移転かで揺れる基幹災害拠点病院である、渋谷区の都立広尾病院の再整備について、病院の機能を中心とした整備方針である報告書と別に、再整備場所の希望について「意見書」という形でまとめることとなった。整備方針では災害対応機能の大幅拡充が盛り込まれる。

広尾病院は1980年に竣工。老朽化のために建て替えることとなり、2015年に閉館の同区青山にある「こどもの城」の土地に移転する方向で、2016年度予算に同国有地購入費用370億円が計上された。しかし経緯が不透明だとして、2016年12月に小池百合子知事が白紙の意向を示していた。

移転建て替えについては現在の478床の維持や災害拠点機能強化、工事中の病院機能維持といったメリットがあるとして進められてきた。一方で現在地での建て替えの場合、病院機能は一時的に落とさざるをえないが、慣れた地で事業を継続できるほか、ヘリポートの運用が青山より行いやすいといった利点もある。

この日の会議でも「税金の無駄遣いは避けるべきで、災害時対応も病院単体でなく周辺病院との連携も考えるべき」「規模が小さくなっても体制をしっかり整えればいいのでは」など様々な意見が出た。

山本保博委員長(一般財団法人・救急振興財団会長)は「この委員会で候補地を決めるわけではないが、意見書には載せることになる」と会議後述べた。都病院経営本部では委員の意見を調整したうえで、今月中に次回会合を開き再整備場所の希望について記載した意見書案を提示する。

この日提示された議論のまとめの骨子案では、広尾病院が災害医療の拠点として都内外の災害に災害派遣医療チーム(DMAT)や医療救護班を派遣。さらにヘリポートを備え島しょ医療の拠点にもなっていることなども踏まえ、1.「首都災害医療のベースキャンプ」としての機能強化2.求められる医療・役割に即応できる「診療体制・機能の重点化」3.地域医療の将来を見据えた「地域貢献モデル」の発信4.都民の納得が得られる「持続可能な病院運営」の実現―の視点から課題を整理し、整備方針をまとめることが示された。

災害医療の機能強化では現在の課題として災害拠点病院には平時の2倍程度の入院患者受け入れが必要なのに対し、現状は1.25倍にとどまること、災害対策本部やトリアージスペースといった災害時に確保すべきスペースが圧倒的に不足している点、NBC(核・生物・化学)災害に対応するための除染テントやシャワーがあるが、貯水設備がない点などが挙げられた。一方で現敷地の容積率は317%なのに対し、現在の施設は210%と敷地のポテンシャルを利用しきれていない。

整備方針として、建物の配置や院内スペースの転用性を高め、災害時用のスペースを確保。NBC災害への対応強化へ専用貯水槽付きの除染シャワーも整備する。また病床利用率が2年連続で70%以下となっている経営面の視点も踏まえ、現在の478床から400床に縮小。現在の場所で再整備の場合は容積率のさらなる活用や、看護学校スペースの転用で、災害時は平時の2倍の入院患者を受け入れられるようにする。

さらに外科・整形外科・形成外科・脳神経外科で構成する外傷センターを設置し、重篤なけがに対応する災害・医療救急体制を強化。島しょ地域についてはヘリポート以外にウェブ会議による診療システムを構築し、患者に遠距離を感じさせないサポートを目指す。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介