ISILやタイに注意

2015年11月13日、パリ同時多発テロ事件。この前から当社ではSSDというシステムの導入が始まり、自宅から会社のパソコンを操作できるようになっていました。事件が起こったのは現地13日金曜日夜、日本時間で14日の朝でした。安否確認の作業は自宅のパソコンから行いました。2015年1月7日のシャルリ―・エブド襲撃事件以降、フランスの警備は強化されていたにも関わらず、テロ事件が発生したことから、さらに警備は強化される。また、14日の追悼に集まったパリ市民へのテロはなかったことから、テログループにも戦力に余裕がないのではと考え、フランスへの出張は止めないと判断しました。

2016年1月14日、ジャカルタ爆破事件。第一報はジャカルタ事務所から入りました。事件の発生場所は事務所から800メートルの地点で、爆破されたスターバックスは駐在員が利用しているところでした。ジャカルタ事務所から国外退避の指示要請はなかったことと、テロリストの写真と映像から訓練されていない様子がわかり、ジャカルタへの渡航は継続、注意喚起のみで終わりにしました。

2016年6月28日、イスタンブール国際空港での自爆テロ。第一報は出張者からでした。異変に気付いて素早く避難し、自分の安全を確保してから第一報を発信してくれました。トルコの出張者と、乗り換えの可能性のある出張者の安否を確認。トルコの出張を止めないこととし、29日に注意喚起を発信しました。止めない理由は、テロリストがセキュリティーゲートを突破できなかったこと。私服で駆け付けた警備員の能力が高く見えたことと、日本時間の29日正午過ぎには空港は通常営業を再開したことからでした。

2016年7月15日、トルコのクーデター。テレビ放送の映像とネットの画像と動画を見て、クーデター側の戦車の砲身が上に向けられていること、乗員が戦車の外に体を出していることから、戦うつもりがないと判断、すぐに終息すると見込みました。一方、出張者はすでにホテルで待機していたことから、出張者の帰国と出張中止の指示はせず、注意喚起もしませんでした。

2017年1月6日、トルコイズミル爆弾テロ。3名が出張中でした。裁判所前で爆発したことと、日本人に被害者はないということで、注意喚起のみとしました。出張予定者には出張中止の指示はしませんでした。しかし、テロ事件が西側にある地方都市で起こったということから、出張者派遣部署からトルコへの出張可否を検討するよう要請がありました。現在は出張を止めないこととしています。

2017年1月31日、ブラジルにおける黄熱病の流行。2月6日から11日、1名がリオデジャネイロへ出張予定でした。リオデジャネイロの北側の隣接する州で黄熱病が流行。リオデジャネイロは、黄熱病予防接種の推奨地域にはなっていません。予防接種は接種した10日後から有効なので今からでは間に合いませんが、出張者に黄熱病流行の情報を伝えることが重要と考え、虫よけを体に塗る、ホテルに入室したらすぐに蚊取り線香を探し作動させるなどの注意喚起を発信しました。

最後に今年注目している国と地域は、私の私見ですが、トルコからヨーロッパ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ミャンマー、バングラデシュ、中国、タイです。

トルコからヨーロッパ、インドネシア、シンガポールはISIL関連。現在ISILは、シリアのラッカと、イラクのモスルで包囲されています。ISILの戦闘員の一部はラッカやモスルの住民にまぎれて包囲網から脱出し、トルコからヨーロッパに移動、インドネシア、シンガポール、中国に帰国してテロを起こすのではないかと考えています。

ミャンマーにはロヒンギャというイスラム教の少数民族がいます。バングラデシュとの国境地域に住んでいて、ミャンマーの圧政でマレーシアに難民として避難しています。この難民が一部帰還しており、テロリストがまぎれこんでいると言われています。昨年11月にミャンマーで爆弾事件がありました。2月18日発信の在バングラデシュ日本大使館からのメールで、17日頃に当地在留邦人に対して、SMSにて仏教徒であることを理由とする殺害予告があったとの連絡を受けたことから、テロの危機が迫っていると考えています。

タイはワチラロンコン国王の問題です。この国王は前の首相のタクシン氏と結びつきが深く、何が起こるか分からないと言われています。タイには不敬罪があり王室のことを悪く言えないので、メールで駐在員や出張者に伝えることはできません。そこで駐在員が日本に帰ってきたときにつかまえて、このことを話しています。タイで国王に関連する事案が起こりそうな場合には退避させることを考えています。

(了)