地方行政機関の職員・施設等の被災による機能の大幅な低下

●地方行政機関等の機能不全は、事後の全てのフェーズの回復速度に直接的に影響することから、レジリエンスの観点から極めて重要な意味を担う。
●平成23年4月現在、業務継続計画を作成している地方公共団体は、都道府県で38.3%、全市町村で4.3%に留まっており、地方公共団体における業務継続計画の作成と内容の向上を促進することが必要である。
●官庁施設の耐震化については、その防災上の機能及び用途に応じ想定される地震及び津波に対して耐震化等が行われており、現在実施中の対策が完了すれば最低限人命の安全の確保と機能確保は図られるが、完了に向けて引き続き対策を実施することが課題である。
●特に、地方行政機関の耐震化が遅れており、庁舎が被災したときの業務バックアップ拠点となりうる学校、公立社会教育施設、社会体育施設等の耐震化の促進が課題である。
●特に地方公共団体の消防職員に多くの被害者が生じる恐れや警察署の耐震化率については約8割にとどまることなどから、南海トラフの巨大地震のような大規模災害発生時には、地方公共団体の警察、消防機能が十分機能しない恐れがある。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、地方行政機関の職員・施設等の被災につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。
●9割が避難所となる学校施設において、吊り天井等の非構造部材の耐震対策が構造体の耐震化と比べ著しく遅れており、耐震対策の一層の加速が必要である。また、天井等落下防止対策を進めるため、専門的技術者の養成、技術的な支援体制の整備が課題である。

電力供給停止等による情報通信の麻痺・長期停止

●情報通信機能の提供には、電力等その他の主要インフラの維持を前提としており、電力等が長期停止した場合の対応については、検討されていない分野もあることから、電力供給の長期停止に対応できる情報提供手段について検討が必要である。
●情報通信インフラを構成する無線中継局舎等について、今後耐用年数を超えるなどするものが増加することから、これらの耐震化の促進が課題である。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、電力供給停止等につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。

郵便事業の長期停止による種々の重要な郵便物が送達できない事態

●郵便局数が多く、日本郵便(株)において、数年計画で耐震化を実施する必要がある。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、輸送路等の被災による郵便事業の長期停止につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。

テレビ・ラジオ放送の中断等により災害情報が必要な者に伝達できない事態

●放送分野においては、特にラジオネットワークについて、送信所の老朽化や立地条件による浸水リスク、経営基盤の脆弱性、地域密着型情報ネットワークの構築、都市部での難聴や地理的・地形的な難聴の発生等の課題がある。

大規模災害発生後であっても、経済活動(サプライチェーンを含む)を機能不全に陥らせない

サプライチェーンの寸断等による企業の生産力低下による国際競争力の低下

●企業毎のBCP策定に加え、企業連携型BCPの策定に取り組む必要があるため、関係府省庁及び民間も含めて幅広い観点からの検討が必要である。
●川上から川下までサプライチェーンを一貫して途絶させないためには、港湾・道路・空港等、各々の災害対応力を強化するだけでなく、輸送モード相互の連結性を向上させることが必須である。
●物流インフラ整備にあたっては、平時においても物流コスト削減やリードタイムの縮減を実現する産業競争力強化の観点も兼ね備えた物流インフラ網を構築する必要がある。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、エネルギー供給の停止につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。
●雨水・下水道再生水等の水資源の有効利用等、大規模災害発生時に水資源関連施設が機能しなくなった場合のバックアップ方策を検討する必要がある。

社会経済活動、サプライチェーンの維持に必要なエネルギー供給の停止

●エネルギー供給停止は、事後の回復過程の速度を直接規定するのみならず、二次被害の誘発・拡大をもたらすことから極めて重要度は高い。
●輸送網が分担された場合の備蓄拠点等を検討する必要がある。
●物流インフラ被災時に、事業者だけでは解決できない問題があり、関係省庁間の協力・連携を事前に十分準備する必要がある。
●タンクローリーの通行規制等、平時における合理的な規制が災害時の緊急輸送の支障となる場合がある。
●非常時における物資供給の優先順位付けは、事前には準備されていない。

コンビナート・重要な産業施設の損壊、火災、爆発等

●エネルギー・産業基盤における災害は、大規模化・複雑化しており現状の消火技術では対応できない恐れがある。
●コンビナート被災時に、事業者だけでは解決できない問題があり、コンビナート防災・保安に係る関係機関の連携、対策実施が必要である。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、コンビナート重要な産業施設の・損壊等につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。

海上輸送の機能の停止による海外貿易への甚大な影響

●物流インフラ被災時に、事業者だけでは解決できない問題があり、関係省庁間の協力・連携を事前に十分準備する必要がある。
●企業毎のBCP策定に加え、企業連携型BCPの策定に取り組む必要がある。
●港湾施設の多発同時被災による能力不足、船舶の被災による海上輸送機能の停止への対応を検討する必要がある。

太平洋ベルト地帯の幹線が分断する等、基幹的陸上交通ネットワークの機能停止

●輸送モード毎の代替性の確保だけでなく、災害時における輸送モード相互の連携・代替性の確保が必要である。
●影響が極めて甚大な被害であるため、関係府省庁が連携して幅広い観点からさらなる検討が必要である。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、太平洋ベルト地帯の幹線の分断につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。

複数空港の同時被災

●輸送モード毎の代替性の確保だけでなく、災害時における輸送モード相互の連携・代替性の確保が必要である。

金融サービス等の機能停止により商取引に甚大な影響が発生する事態

●金融庁が主体となった取り組みが行われているが、全ての金融機関の取り組みを把握することは困難であるとともに、情報通信、電力等その他の分野での取り組みに大きく影響される。このため、関係省庁や自治体、日本銀行、金融機関等、他の重要分野等との連携強化が必要である。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、金融サービス等の機能停止につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。

食料等の安定供給の停滞

●災害時対応に係る食品産業事業者、公共施設管理者間の連携・協力体制の拡大・定着させるとともに、農林水産業に係る生産基盤等の災害対応力を強化する必要がある。また、地域コミュニティと連携した施設の保全・管理や施設管理者の体制整備等のソフト対策を組合わせた対策が必要である。
●川上から川下までサプライチェーンを一貫して途絶させないためには、港湾・道路・空港等、各々の災害対応力を強化するだけでなく、輸送モード相互の連結性を向上させることが必須である。
●物流インフラ整備にあたっては、平時においても物流コスト削減やリードタイムの縮減を実現する産業競争力強化の観点も兼ね備えた物流インフラ網を構築する必要がある。
●常時における物資供給の優先順位付け非は、事前には準備されていない。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、食料等の安定供給の停滞につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。

大規模災害発生後であっても、生活・経済活動に必要最低限の電気、ガス、上下水道、燃料、交通ネットワーク等を確保するとともに、これらの早期復旧を図る

電力供給ネットワーク(発変電所、送配電設備)や石油・LPガスサプライチーンの機能の停止

●電気事業者による地震津波対策の取り組みや、石油・LPガス供給インフラ等に関する耐震化等の取り組みが行われているが、現行の耐震基準を超える事態には対応できない可能性がある。また、事業者だけでは解決できない問題があり、関係省庁間の協力・連携を事前に十分準備する必要がある。
●地域における安定的な電力供給や自立・分散型エネルギーシステム構築のため、バイオマス、土地、風等の地域資源を活用水、した再生可能エネルギーの導入を図る必要がある。

上水道等の長期間にわたる供給停止

●上水道施設等の耐震化、自家発電施設の設置を優先度を高いところから順次進めているが、対策を了するまでに時間を要する状況にあり、大規模地震等が発生した場合には、長期の停電や燃料補給の停滞による影響を受けることを含め、広域な断水が長期化する恐れがある。このため、耐震化の推進とあわせて、応急給水を円滑にするための地方公共団体間等の連携を強化する必要がある。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、上水道の長期間にわたる供給停止につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。

汚水処理施設等の長期間にわたる機能停止

●下水道、集落排水施設、浄化槽、廃棄物処理施設の耐震化や下水道BCPの策定等の取り組みが進められているが、対策を了するまでに時間を要する状況にあり、大規模地震等が発生した場合、長期の停電や燃料補給の停滞による影響を受けることを含め、広域にわたる機能停止が長期化する恐れがある。このため、耐震化の推進とあわせて、管理主体との連携、管理体制の強化等、ソフト対策についても強化する必要がある。
●河川・海岸堤防、下水道等が整備途上であること等により大規模な浸水被害が発生した場合に、汚水処理施設の長期間にわたる機能停止につながるおそれがあることから、浸水防御のための施設整備を進めることが必要である。