2013/09/25
誌面情報 vol39
複数受電、ガス・重油の発電も
停電対策には3重の策が講じられている。東京電力の2つの変電所から特別高圧受電を行っており、メインの変電所から受電ができなくなった場合、サブの変電所から受電する。長時間停電になった場合は自家発電に切り替える。東日本大震災と阪神淡路大震災で信頼性が実証された中圧ガスを東京ガスから供給してもらうほか、ビル内に貯蔵する重油を使うこともできる。中圧ガスの導管は、一般家庭に送られる低圧ガスに比べて伸縮性に優れた素材でできており地震に強いのが特長だ。
停電対策がある程度行き届いた一般的な高性能ビルでは、オフィス専用部の照明と共用部の照明を確保するので精一杯だが、同ビルでは、空調、電源、OA照明トイレのいずれもがフルに使用できる。ビル内に貯蔵している重油だけであったとしても72時間の電源供給が可能という。浸水対策重要設備は上階に 日本橋はT.P.(東京湾平均海面)+約3.5m。東京湾内の最高津波高は、P.T.+1.4mと想定されているが、同ビルでは浸水対策計画水位を「T.P.+5.0m」に設定。これより低い部分には、建物内への水の侵入を防ぐよう高さ1.5mの止水板を設けたり、特殊仕様のシャッターを設置する。
一般的なビルでは、機械室が1階や地下階にあるケースが多いが、機械室の大半を7階と屋上の上部に配置。非常用発電機を屋上に、受変電設備と通信設備を7階に置き、地下は、ポンプ施設など最低限に留めて密閉する。
トイレは2週間以上使用可能
上下水道が断水されても、オフィス内の全トイレは2週間程度利用できる。一般的なビルでは、停電による受水槽からの水供給や断水によって水洗トイレの使用ができなくなり、簡易トイレで急場を凌ぐのが普通だが、1300人の館内人員が想定され約る同ビルでは、被災時に発生した汚物自体の処理を問題視した。 電力供給の強靭さと本ビル特有の排水処理循環システムにより長期間のトイレ使用が可能になる。本ビルでは、屋上の雨水と汚水処理槽からリサイクル処理する水と、雑用水槽に溜まっていた水の3種類を有効活用することで水洗トイレの利用を可能にする。防災グッズの備蓄スペースも 一般的な賃貸ビルなら、入居者が、防災対策の非常用資材や食料、飲料水、医薬品等をテナントルーム内に保管しなければならないが、同ビルでは、入居者向けの防災備蓄スペースをトランクルームに確保している。これにより、入居者は、居たくスペースを有効に利用できるほか、東京都が今年4月に施行した帰宅困難者対策の防災備蓄対策も万全となる。完成は来年8月予定。
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方