豊かさ暮らしなど 5つの基本方針 
次世代郊外まちづくりでは、①豊かさ、②暮らし、③住まい、④土台、⑤仕組みという5つの視点で、まちづくりビジョンの基本方針を検討してきた。 

①の“豊かさ”は、「人が活躍するまちの実現」を目指し、人が仕事や趣味、生涯学習を通じて、精神的な幸福を得られる街を志向したもの。 

②の“暮らし”は、「多世代・多様な人々が暮らし続ける暮らしのインフラ・ネットワークの再構築」。既存の高齢者にとても快適で、若者が住みたくなるような魅力ある街にするため、コミュニティリビングの形成を図るもの。 
③の“住まい”「住まいと住宅地は、を再生、再構築していく多様な住まい方が選べるまち」と定義。大規模団地や企業社宅は、所有者の理解や合意を得て住民の共感が得られるように再生するとともに、戸建住宅地は建て替えや世代交代を進めるルールづくりに努めるなどして再生を図る。いずれの再生も、買わずに住める郊外」「を視野に、シェアハウスやコレクティブハウス(親しい仲間と共同生活する住宅)高齢者向け住宅などの供給も、想定している。 

④の“土台”は、「生活者中心のスマートコミュニティを実現する」もの。豊かさを伴う住まいや暮らしの実現には、それを支える土台=インフラが必要不可欠。次世代という観点では、地域でエネルギーを賢くやりくりして使うスマートコミュニティとICT(情報通信技術)の積極的な活用を提案する。 

⑤の“仕組み”は、「まちづくりを支える持続可能な仕組みを創っていく」としたもの。前記4つの基本方針を実現するための仕組みを創ること。まちづくりを推進する地域の担い手を育て、コミュニティ活動を持続させるための組織や仕組みづくり(エネルギーマネジメント)を目指す。

持続と再生に向けた10の重点施策 
さらに次世代郊外まちづくり基本構想では、10の重点施策をとりまとめた。 

内訳は、①コミュニティの創出、②地域経済モデルの創出、③保育・子育てネットの実現、④医療・介護の地域包括ケアシステム「あおばモデル」の実現、⑤新たな地域の移動のあり方の提示、⑥既存の公的資源の有効活用、⑦既存のまちの再生システムの創出、⑧戸建住宅地の持続システムと暮らし機能の創出、⑨環境・エネルギー・情報プラットフォームの構築、⑩担い手となる組織を創ってまちづくりの主体とする。

2013年は8つのプロジェクトに着手 
2013年6月に基本方針が固まり、同プロジェクトはいよいよアクションの時を迎えた。第一弾となる2013年度の具体プロジェクトは次の8つ。 

1つ目は、住民創発プロジェクト(シビックプライドプロジェクト)と呼び、住民や地域団体から創意工夫溢れるプロジェクトを募集し、選考されたプロジェクトを認定・支援するという。

2つ目は、住民の活動を支える仕組みと場づくりの一環で、最新のICTによる地域活動の情報共有化と、既存のまちの資源を活用したまちづくり交流の拠点づくり。 

3つ目は、家庭の節電プロジェクトとエコ診断。家庭の節電プロジェクトでは、地域ぐるみで節電に取り組んでもらい、その達成度に合わせて地域マネーを発行して地元商店等への来店を促すというもの。エコ診断は、各家庭における省エネ情報の可視化をして、オーダーメイドのソリューション提案を図るもの。 

4つ目は、まちぐるみの保育と子育てネットワークづくり。2013年度は、さまざまな主体が集まり、保育や子育て環境を向上させるための検討を行う。 

5つ目は、地域包括ケアシステム「あおばモデル」のパイロット事業。地域の医療と介護関係者等に参画してもらう仕組みづくりと在宅医療、訪問介護等の仕組みづくりに取り組む。

6つ目は、暮らしと住まいのグランドデザイン(素案)の策定。コミュニティリビング実現への誘導手法など郊外住宅地の再生手法の提案を手がける。

7つ目は、コミュニティ・リビングモデル・プロジェクト。モデル地区内の土地利用転換に伴う再開発事業に日常生活に必要な機能を導入する再生事業を民間事業者と連携して進める。 

8つ目は、独自の建築性能推奨スペック策定。今後のモデル地域内での建て替えの際に、次世代郊外まちづくりの考え方に基づき、建物の仕様として求められる性能や機能を提示するための指針づくりを行う。 

横浜市と東急電鉄では、モデル地域に設定したたまプラーザ駅北側の美しが丘地域の120haを対象に再生事業を推進。同地域には、エレベーターの無い5階建ての企業社宅などの団地スタイルの建物が70棟ほどあり、都市計画の一部変更も模索しながらグランドデザインをつくり再生を進めていく。既に企業社宅を解体して再生事業に着手している具体事例も出てきている。