福島原子力事故の教訓 
福島原発事故では、設計段階から外的事象を起因とする主要装置などの故障に対する配慮が足りず、全電源喪失という過酷な状況を招き、安全設備のほとんどすべてが機能を喪失した。知見が十分とは言えない津波に対し、想定を上回る津波が来る可能性は低いと判断し、十分な対策を行っていなかったことに加え、全電源が喪失する、あるいは複数号機が同時被災するという“過酷事故”が発生する可能性についても想定が甘く、対策がなされていなかった。 

改革プランでは、その根本理由を、原子力という特別なリスクを有する設備運転の責任を持ちながら、経営層全体にそのリスク管理が甘く、原子力部門においても、安全は既に確立されたものとの思い込みがあったと指摘。その結果、過酷事故への備えが設備面でも人的な面に不十分となり、海外の安全性強化策や運転経験の情報を収集・分析して活用したり、新たな技術的な知見を踏まえた対策を講じるなど継続的なリスク低減の努力を衰退させ、さらに稼働率などを重要な経営課題として認識するなど「負の連鎖」を引き起こしていたことにある─とまとめている。 

6本の対策は、この「負の連鎖」を断ち切り、経営層をはじめ組織全体のあり方を根本的に変革させるハードとソフト面からのさまざまな方策を盛り込んでいる。

「完全に備える」「最悪な事態に備える」
それぞれの対策の柱については下の表を参照してほしい。 

大まかに説明すると、ソフトとハードの両面から、「完全に備える」という徹底した事前対策を行うとともに、それでも「最悪な事態に陥る」という被災想定を前提とした事故後の危機対応を両輪とする。これらを継続的に改善していくことで組織に安全文化を定着させる。 改革プランは、四半期ごとに進捗状況が内部評価され、対外的にも公表される。既に今年7月と10月に進捗報告書が発表されている。 

対策の中には、既に改善が達成されている短期的なものから長期的な時間を要するものまで幅広く含まれるが、達成できてもそれで終わるわけではない。通常業務の中に落とし込まれ、四半期ごとの評価でさらなる課題や不足しているものがあれば新たに対策に組み込まれ、継続的にPDCAサイクルを回していくことになっている。当面、改革の目標年度などは定めず、部門ごと進捗が管理されていく。