−いま取り組むべき効果的な訓練とは−

株式会社三菱総合研究所科学・安全政策研究本部
社会イノベーショングループ
石井和

2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)(以下、A/H1N1という)の流行からはや5年近くが経過しようとしている。幸いにしてA/H1N1の病原性は低いものであったため、当時の対策の前提としていた高い病原性のインフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)等)と比較すれば、死亡者や重症患者の発生といった直接的な被害の大きさという点においては結果的に事なきを得た。

5年前と比較して、新型インフルエンザ対策に関連する法令や計画(BCP含む)、組織体制、ワクチン供給体制等、様々な危機管理のしくみ(以下、危機管理システムという)が整いつつあるものの、筆者個人の見解としては、対応イメージの固着化や危機意識の薄れ等のいわゆる風化現象が同時に進んでいるようにも思える。

我々は2011年に東日本大震災を経験した。危機管理とは臨機応変の対応力ではなく、事前の備えこそが重要であるということを学んだ。また、事前準備に関しても、危機管理システムを構築することが目的ではなく、それが社会や組織に実装され実効を伴うこと、すなわち社会や組織が災害から回復する力(レジリエンス)を真に発揮できることが重要であるということを認識した。

新型インフルエンザの危機管理システムが実効を得るためには、それをPDCAサイクルにより継続的にマネジメントしていく必要がある。マネジメントのための有効なツールとして訓練や演習(訓練と演習は厳密には意味が異なるが、以下では便宜的にまとめて訓練という)がある。本稿では、新型インフルエンザの危機管理システムを効果的にマネジメントするための訓練のあり方や訓練手法について考察したい。

新型インフルエンザ対策訓練の現状
新型インフルエンザ対策訓練は、国、自治体、企業等のいずれにおいても、地震や風水害対策訓練と比較してそれほど多く実施されている状況にない。 

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