2017/10/11
防災・危機管理ニュース
内閣官房は10日、「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」の第36回会合を開催。2019年に決定予定の次期国土強靭化基本計画の策定に向け、外部有識者からのヒアリングを行った。災害復興への工夫、森林資源を活用した産業振興と都市の強靭化、災害対応におけるICTの利活用、減災に資する人材育成をテーマに4人がプレゼンテーションを行った。
関西大学社会安全研究センター長の河田惠昭氏は災害復興への工夫について説明。米国では市単位で強制的に水害保険に加入していることを紹介。また災害復興の大きな問題として所有者不明の土地が九州全体の面積を上回る410万haもある地籍の問題や、上場企業の86%が災害リスクの高い東京に集中していることを挙げた。解決策として地籍については土地所有権とは別に公共的な利活用権を簡単に設定できる制度や、所有者の探索を円滑にできるようにし、土地所有者の責務を明らかにできるようにすることが重要とした。また東京一極集中の解消も呼びかけている。
鈴木康友・静岡県浜松市長は同市の森林を林業振興と防災対策に活用している取り組みを紹介。世界共通基準であるFSC(森林管理協議会)認証制度を活用し、森林整備と地元材である天竜材の販売を拡大。今では市内人工民有林の約70%にあたる約4万4404haがFSC森林認証を得ており、市町村別取得面積では日本一。林業活性化以外に森林の管理がいきわたるようになり、保水力向上など防災力の強化にもつながっているという。
電気通信大学大学院情報理工学研究科准教授の山本佳世子氏は災害対応におけるICTの利活用について語った。1995年の阪神・淡路大震災では電話や交通機関が途絶し、被災地中心部が情報伝達の空白地域となったほか、情報発信元はほぼマスコミだった。しかし2011年の東日本大震災ではSNSなどインターネット環境が整ったことで情報空白地域が最小化される取組が実施されたと解説。今後への提言として平常時から活用されているSNSなどの情報伝達手段をそのまま緊急時も災害対策に活用すること、情報通信環境の強靭化や自家発電といった電源の確保などを挙げた。
兵庫県立大学減災復興政策研究科長の室崎益輝氏は減災に資する人材育成について説明。応急危険度判定や住宅被害調査など災害対応にあたる人材の絶対数が足りないほか、災害対応に必要なシステム作りも追いついていないと評した。問題解決には国民の意識向上のみでなく、防災人材のための養成や研修のプログラムの体系化を進めることが重要だと指摘した。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方