災害が起こると原材料や部品の調達が困難になり製品の生産が停止する。サプライチェーンの寸断は分業化が進んだ今、どの企業も抱える問題だ。リコーグループは国内外に広がったサプライヤーとBCP連携を強化し、生産を早期再開できる体制づくりに挑んでいる。

「東日本大震災では通常通りのオーダーに完全に対応できるまでに7カ月かかりました。原材料や部品の調達から製品の輸送までサプライチェーン全体のBCPが求められています」と語るのはリコー内部統制室・TRM推進グループの荻原毅氏だ。リコーは東日本大震災で現地の生産ラインが被災した。旧東北リコー(宮城県柴田町、現リコーインダストリー東北事業所)は天井が落下し、固定されていた大型の貯水タンクが飛び上がり大きく移動するなど、施設も甚大な被害を受けた。 

BCPに基づき、現地ではすぐに復旧に動いた。設備の代替など現場がアイデアを出し合い、臨機応変に対応したおかげで3月28日には主要なラインの再開にこぎつけた。4月7日の震度5強の余震で再度大きく被災したが、それでも全てのラインが4月26日には復旧した。ところが、その後も取引先から一部の主要部品が思うように入らず生産遅延が発生し、被災前の操業レベルに戻ったのは同年10月中旬。震災からはすでに7カ月が過ぎていた。この経験を踏まえ、リコーではサプライヤーも巻き込んだサプライチェーン全体としてのBCPレベル向上に向けて踏み出した。

被災地でも8日後に消耗品提供 
リコーが目指すBCPは、大規模災害が発生してから8日後には被災地でもトナーなどの消耗品と保守サービスを平時に近い状態で提供できるようにすること。もちろん、自治体や病院などの緊急対応が必要な組織には即日にも対応できるようにする。一方、非被災地については発災3日後までに消耗品と保守サービスを提供することを目指している(表1)。非被災地の多くの顧客は通常レベルのビジネスを続けているため、顧客のビジネスを止めないことを優先するという理由だ。消耗品や保守サービスを除く主要製品については、1カ月以内の生産体制の復旧を目指している。 

そのため同社では、消耗品生産拠点の二重化、輸送経路や在庫配置の見直しなどに加え、輸出関連業務の一部を海外拠点で可能にするなど貿易事務機能の代替化を実現している。平時の業務効率化やスピードアップを図りながら、事業継続のための施策展開も同時に進めている。ただし、原材料や部品の調達がボトルネックになるため、リコーグループ、サプライチェーン全体を含めたBCPの構築が目標達成には不可欠になる。