渋谷ヒカリエ。再開発中で大型ビルが少なくなっている渋谷駅周辺でひときわ目立つ

東京・渋谷地区は大災害発生時、職場や学校に約3万6000人がとどまり、さらに屋外で約3万人が行き場がなく滞留すると予想されている。本社を置く渋谷地区で駅のみでなく多くの施設を所有・管理する東京急行電鉄。同社は約100カ所の企業や学校のほか行政で組織する「渋谷駅周辺帰宅困難者対策協議会」で中心的な役割も果たしている。

2027年度に全体の街びらきを目指し、同社が中心となる大再開発プロジェクトが渋谷駅を中心に進んでいる。その中でいち早く完成し、ランドマークとなっているのが2012年開業の「渋谷ヒカリエ」。渋谷区と帰宅困難者受け入れ協定を締結。帰宅困難者受け入れのほか、同施設内には渋谷区防災センターもあり、大災害時には区の災害対策本部以外に協議会現地本部も置かれ、「渋谷の心臓部」となる。

渋谷ヒカリエは地下4階・地上34階建て。商業施設やオフィスだけでなく1972席ある劇場「東急シアターオーブ」や約1000人が一堂に会することができるエキシビションホールもある。災害時には劇場やホール、さらに地下・地上を多層レベルで繋ぐ「アーバンコア」と呼ばれる動線スペースなど計約5500m2のスペースで帰宅困難者を受け入れる。

災害用トイレは給排水設備のほか、非常用水槽の水も利用可能。さらに重油による72時間使用可能な非常用発電機も置いている。約200m2の備蓄倉庫を用意。1万3000食分の非常食や寝袋、具合が悪いなど配慮が必要な人向けに簡易寝台と毛布、災害用トイレが使えない場合に備え簡易トイレ等も用意している。また非常発電とつながる災害用トイレが帰宅困難者受入スペース付近を中心に設置されている。ヘルプカードの方や女性向けの区画も必要に応じて作る計画。1階の明治通り沿い入口に情報ステーションを置き電車の運行情報などを提供する。

渋谷ヒカリエから眺めた渋谷エリア

渋谷駅周辺は再開発の最中で、2019年度に渋谷駅直上の渋谷スクランブルスクエア第1期(東棟)や東急プラザ跡地を含む道玄坂一丁目駅前地区などが開業予定だが、渋谷ヒカリエはこのエリアの大規模ビルという位置づけは今後も変わることはない。

こういう状況もあって渋谷ヒカリエでは渋谷駅周辺帰宅困難者協議会を通して周辺との連携も含め日々備えている。いざ受け入れの際にはヒアリングを行う計画だが、実際に多数の帰宅困難者の対応をするのは困難を伴う。帰宅困難者を受け入れるにあたりマニュアルを作成、年2回の訓練も行っているが、渋谷ヒカリエの運営改善だけではなく、周辺との連携が欠かせない。

東急グループでは渋谷ヒカリエ以外にも渋谷キャスト、セルリアンタワー東急ホテル、渋谷エクセルホテル東急が渋谷区と協定を結んでいるが、渋谷区は東急グループ以外の施設も含めて38施設と協定を結んでいる。渋谷駅周辺帰宅困難者対策協議会は、発災時に渋谷区と各施設が連携し、受け入れ可能な施設に帰宅困難者を避難誘導する仕組みを築き、年に複数回の訓練を実施している。

「東日本大震災以上の被害を想定し、準備は日々進めている。協議会を通じ周辺との連携を進める」と語るのは東急電鉄・渋谷ヒカリエ運営課で施設管理を担当する能登弘子主査。自助・共助の精神のもと、周辺と共にいざという時へ備える。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介