2014/05/25
誌面情報 vol43
現在町の職員は247人。このうち正職員が129人で、残りは他の自治体からの派遣職員だ。震災で町長を含む40人が命を落とし、職員数が圧倒的に不足する中、外部からの支援を受けながら復興事業を進めてきた。町の予算は被災前の50億から1100億円へと跳ね上がった。ハード面での復興事業を主に担当する復興局都市整備課には37人の職員がいるが30人が派遣職員。パート職員を除いた4人が正職員で、年齢も20~30代と若い。埼玉県川口市から派遣されている企画推進班の阿部保幸氏は「職員数があまりに少ない」と嘆く。用地買収を含めると年間300億円もの予算を使わなくてはいけないが、「他の自治体なら1人でこなすのが1億円程度。単純計算すれば300人、仮に2億円分の仕事をしても150人は必要」と説明する。
それでも、町は、自然風土、歴史、文化を生かした大槌町独自のまちづくりを進めていく方針だ。阿部氏は「外部から派遣されてきた我々も必死で歴史、文化を学び、できる限り復興に反映させていきたいと考えている。本来なら、地元で生まれ育った正職員が中心に計画を作るべきところだが、人もいなければ、育てるにも時間がない」と語る。この教訓を全国に生かすとしたら「少しでも減災を進め、被災しても過大な投資をできるだけ避けられるようにすることと、地域の復興のあり方について、庁内横断的な話し合いをしておくべきだ」と提言する。
3月28日、大槌町の碇川豊町長は、町長を含めて職員約40人が犠牲となった大槌町役場庁舎の一部を震災遺構として保存すると発表した。旧庁舎の時計を含む正面玄関付近の部分を屋上まで切り取り、補強工事を施し、後世に津波の教訓を伝えていく。
同日、大槌町東日本大震災検証委員会(委員長:元岩手県防災危機管理監越野修三氏)による最終報告書が碇川町長に手渡された。検証報告書では、地震・津波の想定、情報の収集・伝達(津波襲来前)、情報の収集・伝達(津波襲来後)など11の視点から、計34項目の問題点と原因、今後の防災対策の方向性を指摘している。
委員長の越野氏は、「役場の立地条件を考えればもっと危機意識を持って準備や訓練しておくべきだったというのが正直な意見。職員の多くが津波はじわじわと下から水が上がってくるイメージを描いていたことがアンケート結果などから分かってきている。中には逃げたくても全体の雰囲気にかき消され、逃げられなかった人もいた。震度5強以上の地震が起きたら全員が高台に避難する、津波被害の危険がない城山の公民館に対策本部を設置するなど具体的なトリガーに応じた行動ルールを決めておくとともに、個人の状況判断能力を磨いておく必要がある。職員は災害対応にあたる義務感から町民を置き去りに自分だけ助かることはできないという正義感を持つ人もいるが、まずは自分の命を守ることが基本」と話している。
【関連記事】
特集2インタビュー 岩手県大槌町長 碇川 豊氏
誌面情報 vol43の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方