現在地建て替えに転換した広尾病院のオープン時期決定は来年度の見込み(出典:Wikimedia Commons)

東京都は16日、「広尾病院整備基本構想」を発表した。都心における基幹災害拠点病院である渋谷区の都立広尾病院は移転の方針を転換し、現在地での建て替えが決定。当初は2023年度に予定していた新病院のオープン時期については、2018年度策定される見込みの基本計画で新たに決定する。

広尾病院は1980年に竣工。老朽化のために建て替えることとなり、2015年に閉館の同じ渋谷区青山にある「こどもの城」の土地に移転する方向で、2016年度予算に同国有地購入費用370億円が計上された。しかし経緯が不透明だとして、2016年12月に小池百合子知事が白紙の意向を示していた。7月に開かれた有識者会議「首都災害医療センター(仮称)基本構想検討委員会」の第8回会合で現在地建て替えの方向性が示され、事実上決着。9月に基本構想案を出し、パブリックコメントを募集していた。

現在478床ある病床は400床程度に縮小。しかし現行で容積率をフルに活用しておらず、建て替え後の延床面積は増えることから、災害時は空いているスペースを活用し最大約800床まで増床。簡易ベッドでも重症患者に対応できるよう、普段ベッドのないスペースの壁や天井にあらかじめ酸素や空気、吸引用の医療ガスの配管を行う。現在の広尾病院は、災害時は増床しても約600床が限界となっている。

ほかにも建物を免震とするほか、災害対策本部向けやトリアージスペース、応援医療チームの参集スペースといった必要な空間確保を行う。テロなどNBC(核・生物・化学)災害対応として専用貯水槽付きのシャワー施設を整備。現行と同等の屋上ヘリポートを整備する。夜間・休日の発災時にも職員が来られるよう、敷地内か近接地に職務住宅の確保も検討する。工事中も診療を続け、基幹災害拠点医療の機能を維持。建て替えに併設する看護学校の敷地を活用。ほかの病院と連携を強化することで対応する。

整備スケジュールは2018年度に策定予定の基本計画に盛り込む。移転整備での計画は2023年度オープンを予定していたが、現地建て替えに転換したことで延期となる見込み。

■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/11/16/03.html

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介