建設業者のBCPと連携
株式会社富田組

地元建設業者でも、全体最適に向けた検討が始まっている。さぬき市の株式会社富田組は、東日本大震災前から、香川大学や徳島大学で開催されているBCP勉強会などに参加し、地域全体にとっての建設業者のBCPの位置づけを考えてきた。

富田隆弘社長は「災害時は、まずは自分の企業をどう守るかが一番だが、2段階目としては、他社や地域を助けるために早急に動くことが求められるのが他の業種との差。そのためには、発災直後に社員の安否を確認するとともに、現場を閉鎖できるのか、閉鎖できないのかを判断し、発注官庁などからの出動要請に対して、何人が応援に行けるのかを迅速に報告できる体制にすることが重要」とする。自社だけの事業継続を考えれば“応援を出さない”あるいは発注官庁からの評価を期待して“無理をしてでも多くの応援部隊を送り出す”との判断をしがちだが、各社が迅速で正確な状況把握をすることが、全体調整の上では不可欠と、その理由を語る。 

四国では2010年から四国地方整備局が建設業者の事業継続力を認定する制度を開始し、各県でも同様の制度が広まったこともあり、建設業者のBCPについては、県内全般にかなり浸透をしている。しかし、広域での連携体制などはこれまであまり考えられていなかったという。 

「BCPは皆、思うことが違う。地整(地方整備局)は四国全域から、県は県レベル、市は市レベルでそれぞれ優先的に復旧させたい事項が異なる。さらに、地整や県は、大きな業者に復旧工事などをしてほしいと思っているだろうし、市は市内業者に発注したいなど、三者三様の思惑がある。しかし、それぞれが全体調整を考えずに発注をすれば、同じ区間に県河川、国道、県道、市道が走っているような場合、ほとんど距離が離れていないにも関わらず、それぞれの発注者により、複数の業者が入り乱れて仕事をし合うようなことが起きかねない」(富田氏)。 

実際、香川県では、2004年の台風・豪雨に伴う災害で、こうした事態が起きたという。結局、建設業協会が調整役となり、発注者の意向に応じて建設業者を選定するなどの対応をとった。その教訓もあり、現在、富田社長が代表を務める香川県建設業協会長尾支部では、災害時は、管理区分を外し、県道、市道、県河川、市河川などの災害復旧工事をエリアごとに業者を決められる方式を採っている。 

また、建設工事に使う土の融通なども連携の上では重要なポイントになるとする。「土砂はたくさんあっても、川の泥など含水比が高い土を使って道路の復旧をすることはできない。行政も縦割りのため、災害時にどこから土が調達できるかすべて把握しているわけではない。それができるのは、地元の建設業者の強み」と話す。 

2004年の災害時にも地元建設業者が中心となり“今あそこで残土処理工事の土が出ているはずだからあの土をこっちに振り分けてくれ”など連絡を取り合い、土を融通しあったという。 

「大規模災害時には、地元の建設業者が指揮調整の機能を果たすことが重要。自ら重機を使うよりは、他の地域から来た応援業者に土のある場所や廃棄場所を指示するなど全体のマネジメント力が求められる」と富田氏は語る。 

四国DCPに向けた取り組みはまだ始まったばかりだが、将来的には、高速道路へのアクセス道や災害拠点病院へのアクセス道、物資集積拠点など、地域全体として優先的に復旧させるエリアについて関係者間であらかじめ合意形成を図っておくことが求められる。さらに、災害発生時においては、その計画に基づきながらも、関係機関が連絡を取り合い、例えば高速道路の被災カ所があれば国道を使う、国道が被災していれば県道を使うなど、柔軟で効率的な運用体制を構築していくことがBCPの全体最適化された社会につながる。