一歩進んだ制度だが、課題も多い 
災害対策基本法の改正に伴い、今年4月から、一定の地区内の住民や事業者が自発的に防災活動に関する計画を策定する「地区防災計画制度」が創設された。同制度では、市町村の地域防災計画に地区防災計画を取り入れることを市町村防災会議に提案できる。しかし、守氏は「東京駅周辺防災隣組としてすぐに申請は難しいが、できることから徐々に進めるようにしていきたい」としている。 

もともと、地域の自主防災計画は行政が主導するものではなく、地域住民がそれぞれの責任において自由に活動するものだ。少なくとも「住民が自主的にやる」という位置づけには誰もが迷うことはなかった。しかし、地区防災計画制度は、住民らが自主的かつ自由に造った計画を、法的に位置づけることを可能とする。それまで地域の特性に合わせて自主的に策定していたものが社会的に認知されるというメリットがある反面、「善管注意義務」が発生し、善意でやった活動で重大事故などが起きた場合に、担当者の責任問題に発生する可能性もあるとする。善管注意義務とは、例えば一時滞在施設として提供した施設が、倒壊などで犠牲者が出た場合、建物の管理者に責任が問われる場合があるということ。 

ただ、ここに関しては隣組でも対処方法の検討を開始している。例えば避難所の入口に一言「避難所内での事故等に関しては一切責任は持てません」と掲示することや、避難者名簿を書くときに「避難所では一切の責任がないことをご了承願います」などを明記することで、避難所側の責任負担を軽くする根拠にする。「企業が緊急時に帰宅困難者を受け入れる際、避難所内での事故に対する企業防衛の一つになるのではないか」と守氏は指摘する。


進化する大丸有地区の防災訓練

今年3月7日、三菱地所は一般財団法人千代田区医師会、東京駅周辺隣組と連携し、大丸有地区における公民連携の災害時対応訓練として「災害時医療連携訓練」と「帰宅困難者支援・ボランティア立上げ訓練」を開催した。同社は大丸有地区の大規模災害時における医療対応強化のため2013年9月に民間ビル事業者としては初めて千代田区医師会、東京駅周辺防災隣組と基本協定を締結している。今回の訓練は、同医師会の医師・看護師約30人をはじめとした総勢70人が出席した、基本協定締結後初の訓練となった。

当日は、講師役の東京逓信病院の野口・宮沢両医師から参加した千代田区医師会加盟の医師・看護婦に対して災害時医療活動についてレクチャーを開催した上で、災害時に多数の負傷者が発生したことを想定し、仮救護所への負傷者搬送からトリアージ、応急処置など、災害時医療における一連の流れを確認した。また、三菱地所グループの救護活動班と東京駅周辺防災隣組が協力し、負傷者を搬送したほか、千代田区医師会の医師・看護師がトリアージ訓練を体験した。

また、三菱地所と同組は、同日に開催された千代田区によるシェイクアウト訓練と連動する形で、「帰宅困難者支援・ボランティアセンター立上げ訓練」も実施した。三菱地所は2012年8月に千代田区との間で「大規模災害における被災者受け入れに関する協定」を締結しており、今回は千代田区との通信訓練と同社のビル内に設営した受け入れスペースにおける帰宅困難者支援訓練を実施した。隣組では、三菱地所の訓練と並行して災害時のボランティア受け入れを行う「防災隣組ボランティアセンター」立上げ訓練を実施。会員企業従業員の中から、災害時に活動できる事前登録ボランティアと、災害発生時に現場でボランティアの申し出をしてきた「当日登録ボランティア」が連携して、災害発足時の初動訓練や応急手当、災害情報の交信訓練を実施した。三菱地所広報担当の山崎氏は、「今後も9月1日と3月11日の年に2回訓練を開催して行く予定。内容もその時の状況に応じて常に新しいことに挑戦していきたい」と話している。