次期計画策定へ参考になるヒアリングを行った

内閣官房は28日、「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」の第37回会合を開催。2019年に決定予定の次期国土強靭化基本計画の策定に向け、外部有識者から医療や官民連携、情報共有などでヒアリングを行った。

東北大学大学院教授の辻一郎氏は「被災者の生活支援、健康管理について」と題し説明。2011年に起こった東日本大震災の被災者の住まいと健康への影響について、賃貸・みなし仮設への入居者は震災前と同じ自宅やプレハブ仮設の入居者と比べ飲酒量が多く、心理的苦痛や睡眠障害が多いことを指摘。支援不足や孤立が背景にあり、震災復興について被災者の自立支援を強調すべきとした。

一般社団法人・日本ポジティブ教育協会代表理事の足立啓美(ひろみ)氏は「生きる力を育てるレジリエンス教育 ~個人とコミュニティーのレジリエンスから国家レジリエンスへ」をテーマに話した。自尊感情やストレス耐性の向上に役立つ「レジリエンス教育」を子供のころから行うと、メンタルヘルスの強化になると説明。個人のレジリエンスが家族や組織、コミュニティ、国家のレジリエンスにつながると指摘した。

一般社団法人・ADI災害研究所理事長の伊永(これなが)勉氏は「災害対策における官民の連携 外との協定だけではなく、中に迎える体制つくり」をテーマに説明。市町村など官が民間の活力やノウハウを生かし切れていないと指摘。輸送や医療、通信といった専門知識や技術を持つ人材を官側でアドバイザーとして迎え入れるべきだとした。

京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授の矢守克也氏は「コミュニティがつくるレジリエンス」をテーマに、南海トラフ地震で被害が予想される高知県内での取り組みについて説明。黒潮町で津波が来るまでの残り時間を表示し、タイムがゼロになるまでの安全な場所へ避難する訓練に使うスマートフォンアプリ「逃げトレ」を使った実証実験や、屋外になかなか出られない高齢者をまず玄関まで安全に移動させられるよう、玄関までの距離や間取り、家具について記す「屋内避難訓練」を紹介。屋内避難訓練対象者の津波避難訓練の参加率は2015年で36.4%だったが、実施後は100%となり、家具固定も進んでいるという。

最後は国立研究開発法人・防災科学技術研究所レジリエント防災・減災研究推進センター長の藤原広行氏は「防災科学技術研究所におけるレジリエンス情報ネットワーク構築に向けた取り組み」をテーマに説明。府省庁連携防災情報共有システム「SIP4D」について7月の九州北部豪雨では2016年の熊本地震と比較して、空間情報などデータ・情報が増加し、自衛隊や消防、警察、海上保安庁といった実働部隊が利活用するなど、より充実したことを説明した。

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リスク対策.com:斯波 祐介