2000年9月に発生した東海豪雨により、地下鉄駅構内が浸水してしまった名古屋市営地下鉄。1時間の雨量が97mmで、1日の雨量が最大534mmにも達し、名古屋市営地下鉄では、最も深いところで平安通駅が1.7m浸水した記録が残っているという。当時の反省を受け、名古屋市交通局では、現在さまざまな対策を講じている。 

名古屋市臨海部の建築物などに関する防災対策を定めた条例に指定された、海に近い駅では防潮扉を設置。また、トンネル内の排水を行っているポンプ所のうち、非常時に備え予備ポンプを設置している個所では、以前は人がポンプまで行って操作しなくてはいけなかった。現在では当時の反省を受け、急激な豪雨などで地下鉄施設が浸水した場合でも、自動で予備ポンプが動くよう運転方法の見直しを行った。 

そのほか、現在87ある駅のうち浸水が想定される83駅には止水板を設置。南海トラフ地震による津波も想定し、現在も増強を進めている。

局員2000人と市民45人が参加 
ユニークな試みとして、名古屋市交通局は今年5月に、初めて地域住民参加の水防訓練を実施している。集中豪雨が市内域を襲い、各所で内水氾濫、河川氾濫の浸水被害が発生したという想定のもと、地下鉄全駅への情報伝達から始まり、通気口の閉鎖、駅の出入口の止水板立上げ、防潮扉閉鎖、駅周辺の避難場所掲示、トンネル内浸水を想定した列車の徐行運転などを行ったという。には名古屋市交通局全体の半分に当たるおよそ2000人が参加。市内でも防災意識が高いと言われる、西築地学区を対象に港に近い名古屋港駅で行われた訓練には、住民45人が参加した。地下鉄の水防対策について説明を受けたほか、駅構内から非常口を通り、駅の屋上まで避難する訓練を実施したという。 

参加した市民からは「止水板をもう少し高くした方がいいのでは」などの厳しい意見もあったが、「防潮扉のような設備があって安心した」など総じて評価が高かったという。「施設見学と避難訓練を兼ねて実施したが、地域の方々にも地下鉄にさまざまな防水設備があるという理解を深めてもらえたのでは」と名古屋市交通局営業本部電車部運輸課主査の半田匠氏は話す。