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東京湾北部地震は除外 
ただし2004年に想定されていたプレート境界型の東京湾北部地震は除外されました。その理由は大正関東地震の時にエネルギーが解放され、当面動かないと判断されたからです。一方、プレート境界型よりも深いフィリピン海プレート内部で起きる都心南部直下地震が対象になったのは、最近の研究からフィリピン海プレートの沈み込みが従来よりも浅く、影響度が高いと分かったからです。

発生時刻としては、火災被害が発生しやすい、冬の深夜、昼間、夕方の時間帯を想定しました。最大の被害を見積もるために建物被害や地盤沈下などの被害関数も近年の被害地震に比べて大きめに設定しました。 

被害想定に最も影響する火災は、風速に左右されます。関東大震災では最大で毎秒15mだったと考えられていますが、今回の想定では最悪のケースとして毎秒8mの風が吹き続ける設定です。これは日常的にほとんど起こらない風速です。関東大震災の被害を踏まえ延焼火災なども考慮に入れて計算しています。 

発表された被害想定は今の都市構造で全壊、焼失する建物が最大で61万棟、最大死者数は2万3000人。 

61万棟の建物被害の半数は都区部で起こります。これは都区部の建物18%が全壊ないし焼失するということです。詳細を見ると火災によって焼失するのは約43万棟で延焼火災は環七、環八の沿線上まで広がります。揺れによる建物被害は、震源から同心円状にほぼ均等に広がり約17万5000棟。阪神・淡路大震災のおよそ1.4倍で収まっています。その理由は、都心南部直下による震度7の分布地域が全体の約2%に過ぎず、阪神・淡路大震災の50分の1で、さらに建物の建替えによって耐震化が進んだおかげです。 

火災は津波とは違って延焼するので被害が数日間にわたり広がります。想定は出火から3日間。ですから、初期消火などの応急対策で被害を減らせます。電気が原因となる通電火災は安全装置の普及でかなり減少できます。この対策が行政の大きな役目になります。