商品は「カツオとキノコのトマト煮」「とりどり旨味豆のトマト煮」となど現在4種類で、価格は税込310円から450円。商品開発は高知工科大学特任教授の松崎了三氏や神戸のシェフらと進めた。松崎氏は高知県安芸市馬路村という人口1000人の村を、特産品のゆずを使った飲料水「ごっくん馬路村」で全国的に知らしめた町おこしプロデューサーとして知られる。

非常食を日(ひ)常食へ 

商品の特徴は、まず黒潮町でとれたものをなるべく使用していること。

特産品のカツオやラッキョウなど地元商品を地元で加工し、全国に流通させる、いわゆる6次産業で地域経済を活性化させるとともに、被災した時にはなるべく地元で食べ慣れた食事に近いものにしたかったという配慮もある。「被災時に食事を我慢している感じにはしたくなかった」(友永氏)。 

また、7大アレルゲンと呼ばれる卵、牛乳、小麦、そばなどの原料を使用しないなど、アレルギー患者にも配慮した。缶詰としては珍しい取り組みだ。避難生活ではレトルト食品が配られることが多いが、アレルギーを持つと、食べられるものが限られてしまう。病院や社会福祉施設などもターゲットにしたいというねらいもあった。 

「行政などで備蓄する食糧全てでなく、アレルギーを持った方の分だけでも購入してもらえれば、全体の2~3%の市場は確保できるのでは」(友永氏)。 

栄養バランスにもこだわった。避難所では栄養が偏り、口内炎にかかる人が多いと聞き、繊維質やビタミンB2の欠乏にならないように低カロリー高たんぱくのインゲン豆を取り入れた。 

「毎日安全に、おいしく食べられるものを非常食にも活用するという、「非常食」=「日常食」であることが大事だと考えました」(友永氏)。 

将来的には、黒潮町の缶詰は「美味しさ」を武器に、常に消費されながら、備蓄にもなるローリングストック(循環備蓄)を目指したいという。

「食」で「職」を 
現在、黒潮缶詰製作所は従業員が8人(パート3人含む)。施設は大きく製造部分と出荷部分に分かれている。非アレルゲン対応には衛生面を非常に高いレベルでコントロールしなければならないため、バイヤーが見学すると驚かれるほど品質に関して厳重な生産ラインを敷いている。町には缶詰製造の経験者がいなかったため、神戸にある食品工業大学の社会人コースに職員を派遣し、ノウハウを習得した。現在はほぼ手作業で製造しているため日産900個程度だが、3年後には今の10倍以上の1万~1万5000個、売上で数億円の規模にしたいという。 

「従業員も50人から100人規模にし、若者の雇用を創出したい。缶詰の利益が薄くても、地元商品をふんだんに使うため、結果として町が潤えばいいと考えている」(友永氏)。 

仮に将来的に黒潮町が被災した場合には、この工場を産業復興の核にする構想もある。黒潮町の挑戦は、始まったばかりだ。

(了)