冒頭に計画の重要性を説明した赤間・内閣府副大臣(中央)

内閣府を中心とした政府の中央防災会議は6日、「洪水・高潮氾濫からの広域避難検討ワーキンググループ」の第7回会合を開催。「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難に関する基本的な考え方」の報告書案が提示され、とりまとめへ議論を行った。主に大都市部のゼロメートル地帯での大規模洪水を想定。地方自治体を始め行政が連携し、広域避難計画を策定する。全居室が浸水するような場合は域外避難を実施。市町村をまたぐ広域避難について市町村や都府県、警察や消防、交通機関などとの連携が必要とした。

報告書案では浸水区域の居住人口が多く、数十万人以上の立ち退き避難者が発生し、市町村や都府県を超えるような立ち退き避難が必要な事態を想定。各市町村の避難勧告や各個人に避難行動の判断をゆだねてしまうとリスクが増大の可能性があり、最適化のための避難行動の全体像構築が必要だとした。都府県や市町村が連携し、行政の広域避難計画策定を促す。

大規模・広域避難では対象災害や対象地域を設定。家屋流失の可能性がある居住者以外にも全居室が浸水する恐れがあったり、浸水が長時間継続する恐れがあったりする場合は域外避難を原則とする。広域避難計勧告の発令の判断基準を設定。気象や鉄道の運行といった交通条件のほか、避難にあたって支障となりやすい場所を特定し、避難開始時間を設定する。報告書案では浸水が想定される市町村だけでなく域外避難者の受け入れ先として想定される市町村、都府県のほか、警察や消防、自衛隊や海上保安庁のほか鉄道など輸送機関も含め連携が必要としている。住民には自主避難先の確保を促す一方、市町村間で広域避難場所の調整を行うべきとした。

例えば墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区の東京都の江東5区で大規模洪水が起こった場合、最大178万人が避難の必要があり、5区内の域内避難が最大で19万人いたとしても、域外避難が最少でも159万人となる。江東5区外への公的施設への避難者は51万~58万人の見通し。鉄道の運行停止もあることから、天気予報などで推定できる堤防決壊予想時刻の24時間前には避難開始を行うべきとされている。

赤間二郎・内閣府副大臣は会議の冒頭、「近年、(1947年の)カスリーン台風や(1959年の)伊勢湾台風のような巨大台風の上陸はないが、米国がハリケーンで甚大な被害を受けるなど、温暖化の影響への緊急対応は必要だ」と述べ、大規模洪水への備えの重要性を訴えた。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介