半導体の元となるシリコンを切断、切削、研磨する半導体製造装置の製造と販売を行う株式会社ディスコ(東京都大田区)。高度な技術でそのシェアは約7割と世界をリードする企業だ。同社は2008年に事業継続マネジメントシステムの英国規格BS259992を取得し、2012年には国際規格となったISO22301の認証を日本で最初に取得した(本誌調べ)。従業員教育にも余念はない。今年度は全社の事業継続の活動目標にBCPの実行力向上を掲げ、実動演習の回数の増加と、従業員が自身の身を守れるようになる活動に取り組んでいる。

(編集部注:この記事は「リスク対策.com」VOL.49 2015年5月25日掲載記事をWeb記事として再掲したものです。)

部門で作ったタイムライン

4月末の朝10時。ディスコの会議室に、同社の部品営業部の13人が集まり、台風を想定した演習が行われた。「まず演習をしてみて、本番のオペレーションでもいけそうか体感してほしい」と参加メンバーに演習目的を語りかけるのは同社サポート本部総務部BCM推進チームリーダーの渋谷真弘氏だ。部品営業部がつくった台風に対する「タイムライン」を用いる初めての試みだ。

タイムラインとは、災害による被害が発生する数日前から、発生した後の対応まで、さまざまな関連する組織が何をしなくてはいけないかを時間軸で整理した行動計画表のこと。2012年に大型ハリケーンのサンディが米国ニューヨーク州などを直撃した際の対応策として取り入れ、被害を最小限に抑えたことから注目された。

従業員自らの安全のため

演習に参加する部品営業部は、部品の受注から出荷管理、在庫調整までを担う。同部のタイムラインでは、自分たちが帰宅する時間を目標として設定する一方で、業務面では、国内案件の連絡調整、海外案件の連絡調整、輸出管理対応などについて、何時間前までに実施するかが決められている。タイムラインを取り入れた理由は、従業員自らが安全確保をした上で、事業継続の取り組みを主体的に行えるようにすることが大きな目的。 

同部署の演習をサポートする渋谷氏は「これまでに月に2回のペースでリーダー向けの研修とリーダーを含む全メンバー向けの研修を実施してきましたが、発災時に優先すべき3つの行動が明確になってきました」と語る。1つは従業員の安全確保、2つ目が出荷予定品の遅延防止、3つ目が他部署の輸出業務関係者との連絡確保。この3点を達成するための方法として選んだのが、従業品一人ひとりが部門の目的・目標に沿って、自ら何をすべきかを考え実施するタイムラインだった。 

今回の訓練では台風上陸の48時間前からタイムラインを発動。想定シナリオは「強い勢力を保った台風が熊本に上陸し、北東へ時速10kmで進み翌日の午後に関東を通過する」というもの。従業員が全員出勤できるとは限らないので、より現実に近づけるためくじ引きで数名の欠勤者を決め、対応にあたった。 

スタートの合図で、国内班と海外班とに分かれ、国内班では出荷案件の洗い出しとお客様への出荷や納期遅延などの連絡を模擬的に実施。海外班はレギュラー出荷のスケジュール確認などに取り組み実際に決められた時間までに対応ができるのかを検証。訓練後、参加者からは、48時間前では「フライトスケジュールがまだ不明なので、どのくらい遅れるか明確に伝えられない。輸送業者に前倒しした集荷を依頼する方法で対処したい」「今日中に完了できないものは、他の拠点に依頼して対応したい」など、課題と改善方法が発表された。一人ひとりが本番をイメージして演習することで本質的な課題が明確になった。