2018/02/28
激変の時代!海外リスクに備える
※前回の稿はこちらから。
■北朝鮮のミサイル問題に組織はどう立ち向かう?(上)
残された2分間を有効活用せよ!
http://www.risktaisaku.com/articles/-/5042
Jアラートの伝達内容はよく知られているように、上の写真の文面だ。福田氏によると、現在はこの文面から「頑丈な」が抜けているという。これは「頑丈な建物がなかったらどうすればよいのか」という住民の意見を受けたもの。頑丈な建物が近くになければ、なんでもよいから爆風を逃れられるように建物に入ったほうが生き残る確率は高くなる。このように、危機が発生した事後において、危機から人々の生命を守るために行われる警報や避難命令などを「クライシス・コミュニケーション」と呼ぶ。しかし今年8月、9月に発表されたJアラートによるクライシス・コミュニケーションでは、様々な問題が浮き彫りになった。
クライシス・コミュニケーションの問題点
地域防災計画や国民保護計画などの法的問題がこのままで良いのかという問題点はここでは置いておくとして、まず現実的に防災行政無線が整備されていない都市が多数あることが発覚した。北海道では道内で最も人口の多い都市が防災行政無線を備えていなかった。もちろん携帯電話やスマートフォンのエリアメールがであったり、ケーブルテレビであったりラジオであったり、様々なメディアを通じてマルチメディア・アプローチで国民に周知されるのだが、やはり自治体が備えるべき防災行政無線が整備されていない、もしくは不具合で鳴らなかったといった事態は、今後早急に改めていかなければいけない事項だろう。
もう1つの問題点は、その範囲の広さだ。8月に鳴り響いたJアラートは、茨城県などの北関東から北海道までの広範囲にまたがった。これについて福田氏は「ミサイルが発射した瞬間に、どの方向に飛ぶかを正確に把握するのは難しい。Jアラートは時間との勝負であるため、範囲を特定するよりも早さが優先されているのは現時点で仕方がない」とする。
最後の問題は、緊急時にとれる避難行動が少ないことだ。内閣官房が発表している「弾道ミサイル落下時の行動について」によると、「屋外にいる場合はできる限り頑丈な建物や地下に避難する」「建物がない場合は物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」「屋内にいる場合は、窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」。Jアラートが鳴った時に住民が取れる行動はこの3つしかない。これが様々なところから、「本当に意味があるのか」と非難を受けた。それに対して福田氏は「私は、意味があると考えている。外で立っていて直接熱風や爆風を浴びれば、死ぬ確率は100%。生存率がゼロであるならば、建物の中に入って例え10%であってもその確率にかけて欲しいと思う。地下に逃げ込めばさらにその確率は上がるだろう。そのための社会教育が必要だと考える。危機管理は0か100かで考えることはできない」と強調する。
実際に、第2次世界大戦ではナチスドイツによってロンドンにV-1号、V-2号ロケットが2000発以上撃ち込まれたが、ロンドン市民は地下鉄に逃げ込んで避難生活を送り、多くの命が守られたという。地下空間の爆弾に対する強さは立証されているのだ。イスラエルでも、湾岸戦争時にスカッドミサイルに対して地下空間が強いということが示された。核兵器に対してどれだけ有効かは定かではないが、それでも確実に地上にいるよりは地下にいる方が生存確率は高いだろう。「重要なのは、こういった知識をどのくらい自治体や学校、企業の中で教育できるかだ。そしてそれに対する訓練を怠らないこと。そのようなリスク・コミュニケーションの徹底が、1人ひとりの命を守ることにつながる」(福田氏)。
激変の時代!海外リスクに備えるの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方