開発途上国で病気にかかったらどうする?

ハイリスクエリアへの海外出張でもう1つ気になるのは、渡航先の医療事情だ。アフリカなどの開発途上国の病院では、白衣を着て「ドクター」を名乗ったとしても、正規の医療教育を受けているかどうか疑った方がいい場合もある。日本では医療的な緊急事態が発生した場合、救急車を呼ぶのが一般的だが、途上国ではパブリックの救急車は現地の公立病院、つまり「現地のさまざまな所得層の人」がかかる病院に搬送してしまうので、病院に着いても衛生状態や設備が整っていない場合も多いという。リスクエリア海外出張における医療分野の注意点を探った。

「開発途上国では、先進国のODA(開発途上国援助)により立派な病院が建設されているが、そのなかで行われている行為が日本と一緒とは限らない。日本などの先進国は法律に従い、無免許の医師が病院で勤務することはまず皆無であるが、開発途上国では法律があっても厳密に遵守されないために、医師でない人間が診療している国や地域も存在する」と、世界的にトラベルリスク管理のトータルソリューションを提供するインターナショナルSOS代表取締役社長の関俊一氏は、開発途上国で医療を受けることへ注意を呼びかける。 

たとえ正規の医師免許を取得している人物が治療に当たったとしても、

知識や経験の個人差が大きく、また薬剤や注射器などの医療器具が日本と同じ品質で管理されていない場合も多い。輸血用血液の感染症チェックなども適切に実施されていない国も多く、輸血によるB型、型肝炎やHIV、Cマラリアなどの感染の恐れもあるという。 

では、ハイリスクエリア海外出張に行く前に、渡航者やBCP担当者はどのようなことに気を付けなければいけないのだろうか。

トラベルクリニックを活用せよ
開発途上国といっても、その医療事情は千差万別だ。企業が正確な情報をつかむためには、まず何を調べたらよいか。 

主要都市であれば、まず基礎情報として外務省ホームページの「世界の医療情報」を押さえておきたい。(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/) 

各国在外公館に駐在する日本人医務官により、かかりやすい病気や伝染病、衛生面に注意することなどの一般的な医療情報から、主要都市の代表的な病院の連絡先、英語もしくは日本語が通じるか否かなどの情報が掲載されている。多くの「公立病院」はさまざまな所得層の国民のために設置されている。このため特に開発途上国の公立病院は、患者があふれ、衛生状態や設備の不備、医療スタッフ不足などの問題にしばしば遭遇する。そのため、先進国からの出張者や駐在者には設備の整ったプライベート病院を利用することが一般的に勧められる。 

「国境なき医師団」に参加した医学博士でもあり、同社のメディカルアドバイザーを務める安藤裕一氏は「もし、ハイリスクエリアへの渡航が決まったら、現地の医療衛生情報を入手し、必要であればトラベルクリニックを活用して日本で予防接種などの対策を施すのがベター。高血圧などの持病を持っている人は、かかりつけ医と相談し、出発前に必要十分な常備薬を処方してもらい、できれば英文の簡単な診断書を発行してもらうとよいでしょう」と話す。