「日本屋根ドローン協会」設立発表会にて。前列左から2人目が石川氏

屋根工事業にドローンを活用しようと、一般社団法人・日本屋根ドローン協会が設立され、1日、設立発表会が東京都港区のベクトルラウンジで開催された。代表理事には 東京都品川区で屋根工事業を営む石川商店代表・石川弘樹氏が就任。屋根に登らず、初期点検を10分で完了できる強みを生かし、 これまでドローン活用に消極的だった屋根業界に向けて安全性の向上、人材不足や高齢化の解決策として普及促進を図っていく。

屋根業界ではドローン導入に消極的な風潮があり、石川氏もその一人だったという。ところが自社点検に試験的に導入したところ、報告時に施主から「これなら(自分で登らなくても屋根の状態が)わかる」とこれまでにない反応をもらい、導入を決意したという。

理事を務めるのは、 CLUE社代表の夏目正樹氏。同社はドローンと連携するアプリなどソフトウェア開発を手掛けており、2017年12月に屋根点検用のiOSアプリ「DroneRoofer(ドローン ルーファー)」をリリースした。アプリはドローン本体と連携しており、iPadのアプリ内でボタンを押すだけでドローンが自動上昇し、上昇後も高さ変更が可能で、撮影はボタンを押すのみ。撮影後は自動で下降するので、コントローラーによる操作は不要となる。アプリ内では顧客別に写真管理機能を備える。

「ドローンルーファー」により、コントローラー操作をしない自立運転で上空30mから撮影した画像。高度は1m単位で調節可能。2018年3月現在、アプリに対応できる機種は「DJI Phantom 4 PRO」のみ。

これまで既存住宅の屋根点検を行う場合、できる限り費用を抑えるため、屋根施工業者がはしごで直接屋根に登って点検するのが一般的。 足場も命綱もかけないため、滑落の危険と隣り合わせの作業。従来の住宅1棟の点検業務にかかる時間は2時間程度。厚生労働省の2016年の調査によると、建設業で屋根から墜落・転落した件数は年間846件(このうち40件が死亡事故)。特に2階建て・平屋建てなど低層住宅では、気持ちの油断から高層住宅よりも事故が多いという。

点検業務をドローンに置き換えれば、離陸から撮影・着陸までにかかる時間は約10分程度で済む。直接屋根に登る必要がないため、墜落・転落の危険性がなくなる。上空から撮影した屋根全体の画像を施主と一緒に確認し、必要に応じて タブレット上で画像を拡大しながら異常箇所を特定できる。 石川氏によれば、工事を前提とする詳細な点検業務でない、ふき材の大きな破損・ずれなど基本的な点検業務であればドローンに置き換えられるという。また屋根端部の軒・袖部は危険なため細かく点検できないことも多く、人よりも確実に点検できるメリットもあるという。また点検内容を写真撮影する際も目線の高さでは位置関係を伝えられないことが多く、ドローンを使って上空数10mから俯瞰した画像を使うことで、施主とのコミュニケーションも格段にしやすくなるという。

今後、新協会では屋根事業者や施主に向けたドローン活用の認知促進、正確な操作技能から法遵守や事故予防の知識までを学ぶ 資格制度の創設、ドローンを活用法した新たな屋根業のビジネス創出などを行っていく。 資格は2018年度中の設立を目指すという。石川氏は「もともとドローンにほとんど関心のなかった自分が、日々その可能性を感じ始めている。この驚きを多くの業界の仲間を分かち合っていきたい」と話している。

(了)

リスク対策.com :峰田 慎二