災害時には、初動の状況把握が重要 
災害が発生した時、最初にしなければならないのが、「自分自身の安全を守ること」であることは言うまでもない。その安全が確保された上で、次に起こさなければならない行動が、初期の情報収集と状況把握の、いわゆる「初動」だ。 

災害発生に気付き、安全を確保した段階から、「状況把握」を行い、企業であればその情報を第一報として本社や危機管理担当者に通知することになる。

その後、人、物、設備、情報、取引先などの被害・被災状況を確認し、適切に連絡する必要が生じる。レスキューナウ危機管理研究所代表の市川啓一氏は、状況把握と情報伝達の時間経過を以下のように説明する。
・15分以内には組織のトップに発生の事実を伝える
・1時間以内には被害状況の確認結果を報告
・3時間以内には9割以上の状況把握が完了していること 
以上を達成するには、時間以内の3初動対応でどのような通信手段を用いるかが明暗を分けることになってしまう。

3.11で、なぜPHS同士は問題なくつながったのか 
東日本大震災で経験したように、同時に多数の通信が発生すると、輻そう制御といわれる通信規制が発生する。これは、災害時だけではなく、花火大会やクリスマスなどの時にも起こる現象で、一時的に圏外表示され通信ができない状態を引き起こす。この大規模な現象が発生したのが、3.11だ。

では、なぜPHSには輻そう制御が発生しなかったのだろう。そこには、無線通信におけるシステムの違いが大きく関わっている。携帯電話やスマートフォンは、1つの基地局で広範囲の携帯端末をカバーするマクロセル方式を採用しており、同時に通話が発生すると「通信の集中」が発生する。このトラフィックの急増が、つながりづらさの原因を作り出す。 

一方のPHSは、多くの基地局が重なり合うように携帯端末をカバーしているので、通話が同時集中的に発生しても、基地局の数の多さを利用して「通信の分散」が可能になる。また、1つの基地局に障害が発生しても、他の基地局がカバーするマイクロセル方式のため、災害時などでもつながりやすいということになる。災害時の通信手段は複数が常識 PHSのつながりやすさが認められたとしても、前提として、常に複数の通信手段を準備していることが大切だ。つまり、同じ「連絡」でも、地域や相手、連絡内容などの違いによって、それぞれ適切な連絡手段、通信手段が必要になってくる。そのため、災害時の初動における情報収集で、確実に通信手段を確保することは、組織にとって最重要課題と捉えるべきである。家族間で連絡が取れないのも問題だが、企業において、災害対策本部と経営トップや現地がつながらないというのでは話にならない。 

では、災害時にも安定的につながる通信手段とは何か? 災害時には、音声の通話よりパケット通信の方がいいのはわかっているが、できることなら音声で連絡が取りたいという思いは強い。しかし、携帯電話やスマートフォンは輻そう制御されてしまうので、衛星電話を併用しようという選択肢がある。 

衛星電話は、災害現場などに赴く場合でも、確実に連絡が取れる手段だが、「大きくて携帯しづらい」「国や際電話の使い方を覚えなければならないので、携帯電話のような使い勝手ではない」「衛星の位置に合わせてアンテナの向きも考えなければならない」「電源が充電型なので、常時充電しておく必要がある」など、その利用方法に問題がないわけではない。

利用者の階層別による通信手段のすみ分け 
災害時に重要なのは、複数ある通信システムの中から、何を選択するかで、ここでは、利用者の階層に合わせたすみ分けを提案する。 

階層としては、①災害対策者②意志決定者③安否確認用(従業員など)④家族などとの連絡用、の4つに分けてみる。

●第1階層には、衛星電話
レスキュー隊や企業の先遣隊がこの階層で、被災地で情報収集する。
●第2階層には、PHS電話
連絡が取れないと困る重要な意志決定者の階層。企業の災害対策本部と各部門の責任者や経営管理者が含まれる。
●第3階層には、パケット通信・メール
安否確認システムなどを利用する層で、メールでのつながりが主。
●第4階層には、ツイッターなどのSNSや、災害伝言ダイヤル171、災害伝言板など。
家族間の連絡や安否確認、店舗からの営業情報などは、SNSを利用して拡散に期待。 

この階層分けの中で、従来は第2階層と第3階層が同じ階層に属しており、衛星電話かパケット通信を選択するしかなかった。しかし、第1階層と第3階層の間に、PHSを利用した第2階層を補完的に設定することができれば、対応の柔軟性が生まれることになる。 

BCP対策を考えると、この第2階層に安定した通信手段を持たせることが、企業の社会的責任を果たすことになるだけではなく、取引先との的確な連係や連絡など、社内外の連絡が速やかに取れることで、企業の信用度を高めることにもつながることになる。

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