「天空の蜂」江口洋介らキャストと堤監督が中学生と防災訓練

9月12日から劇場公開された映画「天空の蜂」主演の江口洋介氏らキャストのメンバーと、堤幸彦監督らが、9月1日の防災の日に都内の中学校で防災訓練を行った。「天空の蜂」は最新鋭の巨大ヘリが乗っ取られ、福井県の原子力発電所が危機にさらされるというストーリー。いつ発生するか分からない天災、人災に備え、「大切な人を守ることを考える」ことを、映画と訓練を通じてスタッフ、キャストが中学生とともに考えるのが狙いだ。訓練をコーディネートした跡見学園女子大学教授の鍵屋一氏は「過去、大震災と呼ばれるような大きな地震はおよそ30年のペースでやってきている。これから東京はいつ大地震が起きてもおかしくない状況だ。学生の皆さんにはぜひこの機会に防災について考えてほしい」と話した。

「クロスロード」を開催
訓練には、映画に出演したやべきょうすけ氏、永瀬匡氏が230人の中学生とともに参加。鍵屋氏の指導のもと、「クロスロード」が行われた。「クロスロード」とは「人生の岐路」という意味で、ゲーム形式で行われる防災教育教材。参加者は、カードに書かれた事例を自らの問題として考え、YESかNOで自分の考えを示すとともに、参加者同士が意見交換を行いながら、ゲームを進めていく。災害対応を自らの問題として考え、また、さまざまな意見や価値観を参加者同士共有することが訓練の目的だ。 

第1問は「大地震で家が壊れたので、家族で小学校に開設された避難所に行くことにした。飼い犬であるゴールデンレトリバーはどうする?」という問題が出題。「避難所に連れて行きたい」「連れて行きたいが犬が嫌いな人がいたら申し訳ない」などの意見が出された。最後に鍵屋氏は「犬を飼っている人の気持ちも分かるが、避難所には犬がダメな人もいるので、自分の気持ちだけでなくみんなの気持ちを考えることが大事。しかし、現在では避難所にペットのための動物救護所も設置されるので、預けることが可能」と話した。

第2問は「友達と海で遊んでいる時に大地震が発生。津波に備えて逃げようとしたが、友達は大げさだと逃げようとしない。さあどうする?」というもの。YESは逃げる、NOは説得するという回答だったが、ほとんどの生徒がNOに移動した。 

これに対して鍵屋氏は「1人で逃げるという選択肢が正しい。冷たいと思われるかもしれないが、1人で逃げても、必ず友達は追ってくるから」とした。

勇気を持って
訓練が終了した後には、江口氏らによるトークセッションを開催。堤監督は、「映画を見てもらって、共鳴してもらえればうれしい。1つポイントをあげれば、映画では“勇気”というものの存在が大きい。私自身も震災後、被災地にボランティアに行き、ドキュメンタリーを撮った。皆さんにも、「これだけは譲れない」というものを見つけてほしいと思う」と話した。 

また江口氏は、「これからは台風の多い季節でもある。いろいろな情報が飛び交って、備えるものが分からなくなることがあるかもしれないが、情報を遮断するのも勇気。都会にいるからこそ、1人の時にどうするか考えてほしい」と問いかけた。 

やべきょうすけ氏、永瀬匡氏は「クロスロード」を今回初めて体験したという。訓練終了後、やべ氏は「問題に対し、友達同士でこれはどういうことかと皆真剣に話し合っていた。その回答も、何も考えずに一緒に行動するのではなく、友達と別れて回答している生徒も多かった。ちゃんと自分の意見を出せる訓練になっていて、これからももっとやった方がいいと思った。大人になっても気づくことがたくさんあって楽しかった」とクロスロードの有効性について話した。 

永瀬氏は「僕らが小さいころの訓練といえば避難訓練で、先生から言われてやらされている感じだった。今日のクロスロードは、皆が一人ひとり違う意見を持つことで、自分を見つめ直すことになるのではないかと感じた。自分の意見をきちんともって、さらに行動することはなかなか義務教育では教わらないのでは」と自らの体験を元に訓練を語ってくれた。