環7内側や庁舎周辺などの無電柱化に注力する(出典:写真AC)

東京都は29日、「東京都無電柱化計画~電柱のない安全・安心な東京へ~」を策定したと発表した。2018~27年度までの10年間の都の基本方針などを示したもので、東京都無電柱化推進条例に基づいて策定された。重点エリアの拡大、防災上重要な拠点周辺の都道無電柱化の強化、都道だけでなく区市町村道での支援や、都市開発諸制度を活用した開発者への無電柱化によるインセンティブ付与、整備コスト3分の1カットなどが盛り込まれた。

国土交通省調査による2016年度末現在の東京23区の無電柱化率は国道・都道・区市町村道も含め8%。ロンドンやパリのほか香港も100%、台北が95%、シンガポールが93%、ソウルが46%、ジャカルタ35%と、欧米だけでなくアジアの大都市からも後塵を拝している。都道には約5万7000本、区市町村道には約62万9000本の電柱がある。

都道の電線類地中化率は2016年度末現在39%。これまで首都高速中央環状線内側のセンター・コア・エリアと呼ばれるエリアで重点的に実施。このエリアの都道では94%で、2019年度末には完了する予定。重点エリアを環状7号線内側に拡大。環7内側エリアの対象路線で10年後には全線事業着手を目指す。また区市町村庁舎や災害拠点病院といった、防災上重要な拠点を結ぶ都道の無電柱化も注力する。

都内道路の約9割を占める区市町村道ではわずか2%しか無電柱化が進んでいない。区市町村へ補助などの支援を実施。今年度から浅層埋設や直接埋設など低コスト手法に取り組む区市町村へ、全額補助や都の職員による技術支援を行っている。こういった支援などで区市町村道の無電柱化を推進する。

まちづくりにおいては都市開発諸制度を活用。開発区域内の無電柱化の義務づけのほか、開発者が開発区域外の周辺道路の無電柱化に貢献した場合、最大200%の容積率割り増しのインセンティブを付与する。老朽化が進む都営住宅の建て替え時を機に団地内や周辺の無電柱化を進める。現在主流の共同溝方式ではkmあたり5.3億円かかるといわれるコストについては技術開発を促し、10年後の3分の1カットを目指す。国に対しては財源確保や補助率引き上げといった制度拡充の要望を行う。

今回の計画は具体的な無電柱化の数値目標はないが、都建設局によると、無電柱化の推進に関する法律に基づいた数値目標を含んだ国の法定計画が策定された場合、都でも具体的な数値目標や具体的な路線を含んだ実施計画を策定する方針。その場合は2014~18年度までの第7期東京都無電柱化推進計画を延長・修正する形をとる。同計画では5年間で都道717km、区市町村道199kmの計916kmの無電柱化整備計画延長などを目標としている。国の方では国土交通省が2月に2018~20年度までの初となる無電柱化計画案を公表しており、近く策定の見込み。同計画案ではセンター・コア・エリアの幹線道路の無電柱化の完了などを目指している。

■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/29/22.html

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http://www.risktaisaku.com/articles/-/4932

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介