小池知事は所有者に自覚を持たせ耐震化を進めるという、公表の意義を説明した

東京都は29日、1981年5月31日以前の旧耐震基準で建てられた建築物の耐震診断結果を公表した。建物名も含めた耐震診断結果の公表は都では初めて。特定緊急輸送道路沿道では449棟中31%にあたる139棟が、商業施設など不特定多数が利用する大規模建築物については398棟中4%にあたる1715棟が震度6強~7で倒壊する可能性が高いことがわかった。調査対象の18%が震度6強以上で倒壊する可能性が高い結果となった。

輸送上重要で、沿道建築物の倒壊による閉塞を防がないといけない特定緊急輸送道路沿道建築物と、不特定多数が利用する大規模建築物の公表は、2013年に施行された改正耐震改修促進法に基づくもの。都では2011年に条例で緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断を義務づけ、未診断の建物名を公表してきたが、診断した建物名と結果まで公表するのは初めて。

診断結果は震度6強以上で倒壊または崩壊の(I)可能性が高い(II)危険性がある(III)危険性が低い-の3段階でわかりやすく示した。特定緊急輸送道路沿道は449棟中Iが31%の139棟、IIが15%の68棟、IIIが53%の238棟で改修工事中などが1%の4棟。大規模建築物はIが4%の1715棟、IIが7%の27棟、IIIが87%の346345棟で、改修工事中などは%の11棟。IとIIで調査対象の29%を占める。

Iの大規模施設には新宿区の紀伊国屋ビルディング、港区のロアビルやニュー新橋ビルなど著名な施設もある。商業施設「渋谷109」が入居する渋谷区の道玄坂共同ビルもIだが、2019年度に耐震改修に着工する。

都・都市整備局によると、半年ほど前から公表の予定も含め、建物所有者とはやり取りを行っていたという。小池百合子知事は30日の記者会見で「建物ごとの耐震性を都民に周知することで、所有者が自覚を持って取り組むことを促し耐震化につながる」と公表の意義を説明した。

また小池知事は2018年度に修正作業に入り2019年度完了を目指す東京都地域防災計画震災編について「実効性確保が大事。2016年の熊本地震での避難所での混乱といった教訓や女性視点もふまえ、震災編の修正を行う。計画の実行性を高めるため何が必要か検討し、対応力向上に努める」と説明。検討会議で委員から一時滞在施設でのけがなどが起こった際の管理者免責のため、都独自の補償制度を求める意見が出たものの、2月発表の報告書に盛り込まれなかった帰宅困難者対策については「事業者の協力できる環境づくりが大事。損害賠償責任は全国共通の課題であり、都は国に事業者に責任が及ばない制度づくりを求めている」と述べた。

■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/29/14.html

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介

※2018年4月16日付で東京都から説明補足資料の訂正が行われたため、その内容を反映しました(2018年4月18日)。