食べ物と同じくBCPも鮮度が大事です(出典:写真AC)

■"変化"は避けられません

「 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶ うたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」。平安末期から鎌倉時代にかけて生きた歌人で随筆家の鴨長明さんは、有名な「方丈記」の出だしでこのように書いています。

世の中にはいつまでも同じ状態でいられるものなど一つとしてありません。常に「変化」にさらされているからです。BCP(事業継続計画)などの危機管理計画も同じでしょう。何か月も議論を重ね、やっと完成する。これで重荷から解放されたと思っていると、1年、2年と瞬く間に月日が経ち、BCPのことはどんどん忘れ去られていく。「変化」=「忘却」と言ってもよいくらいです。

ある日、書類整理などをしていると、ひょっこり埃をかぶったBCPが見つかる。「おや、こんなところにいつぞやのBCPが」。開いてみるとそこには、すでに会社にはいない危機対策本部メンバーの名前が。BCPに付随する重要顧客リストなども、すでに取引のなくなった会社や、見たことも聞いたこともない会社が名を連ねている。「だいぶ古くなってしまったなあ…」などとつぶやいている時に限って、ドカンと大きな地震に見舞われたりするのです。

BCPは食べ物と一緒です。放っておけば鮮度や品質が落ちます。賞味期限すなわち「見直しや更新の期限」があるのです。そこで今回は、BCP文書の中でもわりと変化のはげしい項目に焦点を当て、この「見直し」という活動もしくは業務を定着させるためのPDCAを考えてみたいと思います。

■変化の早い項目を中心に考えよう

先ほど述べた「BCP文書の中でもわりと変化のはげしい項目」とは、少なくとも年に1~数回は発生し得る、更新頻度の高い情報のことです。例えば次のようなものが当てはまるでしょう。

一つは「緊急対策本部メンバーリスト」です。非常時に集まる緊急対策本部(災害対策本部とも言う)の顔ぶれ、しっかり確認しておきましょう。人事異動で役職が変わったり、退職や転勤などで対策本部のメンバーから外れたりする確率は決して低くはありません。会社の人材は限られていますから、彼ら彼女らを最大限活用しようとすれば、いつ何時社長命令が出てポジションを変わることになるかもしれない。いざ参集を要請したら、肝心のメンバーがそろわなかった、などということも起こり得るわけです。

もう一つはBCPに添付する補助ツール。「安否確認シート/社員名簿」や「重要顧客・取引先リスト」がこれに当たります。これも理由は先ほど同じです。安否確認シートに記載されている特定の従業員数名から一向に安否連絡が来ないと思ったら、もうずっと前に辞めていた、なんてことも。また、顧客や取引先のリストが古いままだったらどうなるでしょうか。災害の影響で、予定していた納期が大幅に遅れることを相手先に連絡したくても、肝心の電話番号や担当窓口が分からなかったら、悔やんでも悔やみきれません。

よって、ひとまずこの3種類のリストをなるべくタイムリーに見直して、常に最新の情報を維持するように心がけたいところです。よってPDCAの目標は、次のようになるでしょう。

【目標】「BCPを最新の状態で維持できるように、定期的な見直しの仕組みを確立すること」