■更新情報を握っている部門はどこか?

「Plan」のステップには、目標と並ぶもう一つの大きな柱があります。目標の「達成方法」です。BCP文書の策定に関わった人たちと話し合ってみると、アイデア出しもはかどるでしょう。ここでは、「特定の情報ソースを管理する部署から定期的に更新情報をもらうように声をかけておく」という方法をとることにします。

例えば、総務人事部門は社員名簿を管理していますから、社員の異動や退社、新規入社、長期休養者などがあれば、それをタイムリーに教えてもらいます。あらかじめ当部門にBCP上に記載されているリスト(「緊急対策本部メンバーリスト」や「安否確認シート/社員名簿」など)のコピーを渡して、その重要性を説明しておけば、協力が得られやすいでしょう。もっとも、BCPを管理する事務局自体、総務部門が担っていることが少なくありませんから、灯台下暗しというべきでしょうか。

一方、重要な顧客や取引先については、営業部門や仕入部門などに声をかけることになりますが、もしビジネスの相手が非常にたくさんある場合には、事前の下ごしらえが必要でしょう。災害時に納期調整や注文のキャンセルなど緊急連絡のやり取りをしなければならない重要な会社を対象に、プラオリティを割り振り、優先度の高い順にランク付けをするわけです。

その上で、例えば「重要顧客」に関しては重要顧客の新規獲得や消失に関する情報がないかどうかをタイムリーに教えてもらうように依頼します。原材料や商品・製品の仕入を担当する部署に対しても同様の措置を講じます。

また、毎月の経営会議や全体会議で「更新情報の有無」を出席者に問いかけるという、より簡便な方法もあります。忘れないように会議のアジェンダに含めておきましょう。出席者のほとんどは中間管理職以上ですから、自部門のことで変更があればすぐに分かるものと思います。

■さてActの判定はどうなる?

今回のテーマは、目標と達成方法が決まりさえすれば、比較的容易に実行(=「Do」)できるシンプルなものです。ただしPDCAの「Check」を行うためには、1年程度のサイクルを見込んでおかなければなりません。その上で、各部門に協力を要請する前と後での更新情報の集まり具合とそのBCPへの反映度合いなどを「達成指標」とみなして確認するとよいでしょう。

1年後に「Check」を通じてBCP文書類のターゲットとなる記載情報が適切に管理され、最新の状態に維持されていれば、当面は目標が達成できたものとして今回のやり方を標準的な手順に組み込めば、一件落着です。もしうまく行かなければ、改善の余地ありとみなして、再度「Plan」を組み立てるという流れになります。

なお、ここでは人事情報や顧客情報を主な「見直しの項目」の対象としましたが、念のため次の項目についても少し触れておきましょう。

(1)「初動対応手順」の見直しはしなくてよいのか?
火災や地震への対処手順は適切かといったことは、見直しというよりも演習や訓練を通じて、その妥当性や問題点を洗い出しましょう。さまざまなパターンを想定して実施してみてください。

(2)経営方針や組織の刷新でBCPの守備範囲が大幅に変わってしまった
社長の交代や経済環境への対応のために会社の経営方針(または事業方針)が変わることがあります。この場合は部分ではなく、BCP全体の見直しとなります。さまざまな変更要件を検討しなければなりませんが、これについては最後の回で述べたいと思います。

(了)