危機発生時の広報戦略

■自然災害から品質事故、不祥事まで

地震などの自然災害、あるいは日常の品質事故や不祥事、情報漏えいなど、危機発生時における広報のあり方は、時に、その後の組織の命運を左右する。発表の遅さや、記者会見における嘘やあいまいな表現、不適切な発言や態度は、新聞やテレビなどのメディアを通じて一般消費者へと伝わり、信用力やブランド力を落すことにもなりかねない。危機管理広報のポイントをまとめた。

【PART 1】 危機管理広報の枠組み 
最悪のシナリオを避ける

日本語の「広報」という言葉は、外部に対して何かを広く伝えるパブリック・リレーションの意味で使われることが多いが、「危機発生時における広報」はクライシス・コミュニケーションと呼ばれ、メディア対応など外部だけでなく、組織内外のステークホルダーと広く連絡を取り合うことを指す。その目的は、危機の存在を早期に関係者に知らしめるとともに情報共有を図ることで、被害を最小に抑えることにある。

企業は、日ごろから組織に著しい影響を及ぼしかねないリスクを洗い出し、仮にリスクが顕在化した場合の対応を決めておくとともに、危機発生時に、誰に対して、どのような情報を、どう伝えるのか、といった広報戦略についても考えておく必要がある。つまり、危機管理と広報は切り離して考えることはできないということだ。

企業の危機管理について研究をしている三菱総合研究所先進ビジネス推進センターの氷川珠恵氏は「クライシス・コミュニケーションは、組織が危機管理体制の中で意思決定したことをステークホルダーに伝える役割を持つ」と説明する。

 氷川氏は、事故発生・発覚時から広報までの危機対応を図1のようにまとめている。

写真を拡大資料提供:三菱総合研究所

まず、トラブルや事故が発生した際には、大前提として、被害状況や、事故原因などの情報収集を行うことが求められる。その際、氷川氏は、発生した問題が誰に対してどのような影響を与えているか、あるいは今後、誰に影響を与えるだろうかということを整理する「ステークホルダー分析」を行うことを推奨する。自社内で起きた事故でも、実際には外部に被害が及ぶケースも想定されるため、可能な限り広い視点で状況把握を行うことが大切だという。具体的には、顧客、取引先、監督省庁など、すべてのステークホルダーを洗い出し、それぞれの現状と、今後の影響、彼らが要求してくるだろう事項などを整理する(図2)。それらすべてをA3用紙1枚ぐらいに収め、今後何が起こりそうかを関係者が一目で情報共有できるようにすることがポイントだ。

資料提供:三菱総合研究所

「危機発生時には、目の前の対応だけに必死になりがちですが、予想もしていないステークホルダーが反応するなど死角をつかれると対応が後手にまわり、ダメージがさらに拡大する危険があります」(氷川氏)。

そのため、ステークホルダー間の利害関係なども整理しておくことを薦める。たとえば、A会社とB会社というステークホルダーはつながりが強いとか、C会社とD会社はライバル関係にあるなど。こうすることで、ステークホルダー対応の優先順位も整理しやすくなるというのだ。また、影響を楽観的に予測するのではなく、過去の事例などを参考に、できるだけ悪い方向で考えることを注意点として挙げる。

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