フランスに本社を構えるアクサグループは、全世界59カ国で事業を展開。16万人の従業員と1億300万人の顧客を抱える、保険ブランドNO.1を誇るグローバル企業だ。日本は世界でも第2 位の保険市場と言われており、日本におけるアクサグループの保有契約件数はおよそ500万件。グループの総売り上げの10%を占める。同社日本法人のアクサ生命保険株式会社は、東日本大震災の教訓を生かし2014 年、首都圏広域災害時のバックアップ拠点として札幌本社を設立。BCM(事業継続マネジメント)強化を加速している。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2016年1月25日号(Vol.53)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年7月26日)

「多くの金融機関でバックアップ拠点を備えているが、その多くはコールドサイト(最低限のインフラを整えておき、通常は稼働していない拠点)。当社では札幌本社という形で通常からホットサイトとして稼働しているので、首都圏で広域災害が発生しても即座に代替拠点として機能する」と話すのは、同社危機管理・事業継続部マネージャーの今井大輔氏。

同社は東日本大震災の教訓をもとに、首都直下地震や南海トラフ地震に備えたバックアップ拠点の必要性を痛感。国内100カ所以上の都市を検討し、その中から65カ所にしぼり、さまざまな角度から検討した結果、最終的には2013年に北海道札幌市に代替拠点を設置する方針を決定した。

「災害リスクはもちろん、エネルギーや労働供給力などさまざまな問題を検討した。最終的に札幌に決定したのは、行政のサポートが大きかったことに加え、北海道は大学や短大、専門学校の数も多く、現地雇用の面での安心感があったことが大きい」(今井氏)

現在、札幌本社では新契約や保険金の査定・支払い部門など重要業務に携わる社員として、本社からの異動社員70人、現地採用社員100人に加え、外部委託先の要員を含め500人にのぼる体制を整えた。さらに、首都圏が被災した際、東京から札幌本社に派遣した社員が迅速に業務遂行できるよう、地元の大手不動産会社ビッグや流通大手のイオン北海道とも協定を結び、住居や生活物資の調達に不安が発生しないよう配慮した。これらの施策により、札幌本社では平時でも重要業務のおよそ50%の処理能力を有し、東京本社が壊滅的なダメージを受けたとしても、東京からサポート要員を100人増員することにより100%の重要業務が継続できる体制を確立したという。