デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主席研究員 茂木寿氏

2016 年、企業のBCP 担当者はどのような海外リスクに対して、どう備え行動しなければいけないのか? グローバルビジネスリスクの専門家であるデロイト トーマツ 企業リスク研究所主席研究員の茂木寿氏に、2016 年にグローバルで起こり得る11のリスクと日本企業へ及ぼす影響、その対策について聞いた。

海外リスクは国内より数倍高い

今、世界は政治経済・社会などすべての面で非常に流動化している。グローバリゼーションが進展し、人・物・金・情報・サービスが瞬時に世界中を移動できる時代になった。一方でさまざまなマイナス面も生まれている。

日本の企業は、海外進出する際、多様なリスクを洗い出し、評価をしていることだろう。しかし、1回やっただけで終わりにするのでは意味がない。世界情勢はめまぐるしく変わり、新たなリスクが次々に出てきている。特に新興国におけるリスクは多岐にわたる。

「企業をとりまくリスク」は幅広い。これは海外リスクに限らず、日本国内でも同じだ。ただし、日本国内よりも海外のほうがリスクの影響度が大きい場合が多く、発生頻度も高いことが多い。したがって、海外のビジネスリスクというのは国内よりも数倍高いと見たほうがいい。

日本企業をとりまくリスク

それでは、日本企業を取り巻く海外のリスクを見てみよう。

NO.1 自然災害の増加

まず考えなくてはいけないのは自然災害だ。世界的に非常に増えている。BCPにおいても自然災害は大きな脅威になる。自然災害が増える理由は気候変動もあるが、もっとも簡単に考えれば、人が増えるからだ。今、世界の人口が73億人と言われている。これが2100年には100億人を超える。人が増えれば自然災害も増える。なぜかといえば、自然災害は人に影響を与えるから「自然災害」と言うのであって、誰もいない南極で大きな地震があっても、誰一人影響を受けなければ、それは自然災害にはならない。もう1つは、新興国では主に内陸部から沿岸部に人が移動するため、河口で都市化が進むと、それまで水はけができていた土地がコンクリートで固められ水はけができなくなり災害を引き起こす。2011年にバンコクで大きな洪水があったが、今後も世界的に内水型の洪水被害は続くことだろう。

残念ながら、新興国は日本ほど素晴らしい防災対策というのはとられておらず、予算もあまりついていない。例えば、バンコクでは2011年に大きな洪水があったが、政府がそれに対して抜本的に対策をとっているかというと、かなり疑問符がつく。各工業団地やメーカーでは今、2m~3mの防護壁のようなものを独自で作っている。そして、土台を積んでなるべく底上げをして、場合によっては2階に重要な設備を持っていくというようなことをしている。国が守ってくれないなら自分たちでやるしかないということだ。