Q4 時間の経過とともに、必要な情報はどう変わっていったのでしょう? 

発災後1週間くらいまでの第1ステージでは人命救助が何よりも優先されますが、時間が経つとご遺体の対応や避難所への支援物資の輸送などが新たな課題となってきました。つまり災害対応の焦点が時間とともに変化していったのです。それに併せて必要な情報も異なってきました。

しかし、基本的には命に関することが最重要で、被災者のニーズと自分たちの持っている資源、それらをとりまく環境という3つの情報が必要であることに変わりはありません。それらを対応にあたる人・組織を中心に共有していきました。

状況やニーズは刻々と変わるので、その都度情報をしっかり共有しないと連携ができません。その際、何を優先し、どのくらいの資源を投入するかの判断が重要になります。情報を集めるだけにとどまり、県としての重点事項や対策内容を十分に共有できていないと、職員や関係する人たちが何をやればいいのか見失ってしまいます。

Q5 市町村のような小規模な自治体はどのように情報を集め、共有すればいいのでしょうか?

市町村の多くが、既存の部門体制のまま災害対応にあたろうとしていますが、本来なら災害時に必要な業務に応じて組織を作り変えるべきだと私は考えています。

特に情報収集・共有の中心となる「情報班」というものは、おそらくどの自治体でも既存の組織体制の中では持っていません。これでは効率的な情報の共有はできません。それ以前に、市町村の防災担当者の人数が足りないという課題もありますが、最低でも情報班ぐらいは設置すべきではないでしょうか。

Q6 情報共有を妨げるものとして注意すべきことはありますか?

情報共有の重要性に対する認識不足があげられます。行政組織は平時なら各部局だけの対応で済むことが多いのです。一方、災害時には情報を共有し、部局や組織を横断し協力しないとさまざまな出来事に対処できません。

震災時に、平時と同じように部局の案件だと思い、情報を共有せず対応に遅れが生じた例もありました。そのため、組織編成をし直して強制的に情報を共有できる体制に作り変えました。

Q7 東日本大震災の影響もあり、情報共有システムが注目を集め導入する自治体も増えていますが、どのような点に注意すべきでしょう?

システム化することで、効率化と省力化が図れるメリットは大きいでしょうが、注意すべき点は、システムはあくまで人間を補助する「手段」だということです。新しいシステムを導入したからといって情報がすぐに集まり、共有できるわけではありません。

また、集まった情報には、間違った内容のものや、優先順位の低いもの、デマなどさまざまなものが含まれていますから、これらの情報を分析し、断片的なものをつなぎ合わせ目的を達成するために必要な情報に変えていく、つまりインフォメーションをインテリジェンスに変える作業が必要になります。これができるのは今のところ人間だけでしょう。

定量的なデータは必須ですが、それだけではうまくいきません。多額の資金を注いで、すばらしいシステムをつくっても、組織体制がしっかりしてないと使いこなせません。システムに合わせて、組織体制を変えるようなことがあれば、それは本末転倒です。

(聞き手:リスク対策.com編集長 中澤幸介)

Profile
越野修三(こしの・しゅうぞう)
元岩手県防災危機管理監(現岩手大学地域防災研究センター教授)。阪神大震災の際に、陸上自衛隊第13師団作戦部長として神戸市で救援活動にあたる。退官後、岩手県庁入庁。県総合防災室特命参事を経て、防災危機管理監を務めていた2011年3月11日、東日本大震災に遭遇する。消防庁「地域防災計画における地震・津波対策の充実・強化に関する検討会」委員。2013年4月から現職。