※画像はイメージです(Photo AC)

2011年3月11日に発生した東日本大震災。医療現場で課題の1つとして浮き彫りになったのが、災害時における「情報共有」だ。災害時を想定して日々訓練を重ねていても、どこの病院が被災したのか、または受け入れが可能なのか把握することが難しく、実際に病院にたどり着かなければ被災状況を確かめることができなかった。首都直下地震が30年以内に70%程度の確率で発生するという東京都は、都内の広域拠点病院を始めとした約650の医療機関で情報を共有するためにインフォコムの「BCPortal®」を導入。巨大地震への備えを加速している。

東京では東京湾北部地震、多摩直下地震、立川断層帯地震、元禄型関東地震と4つのパターンが想定されており、それが何時発生するかによっても被害想定が大きく異なる。

そのような災害に立ち向かうため、東京都では、より迅速かつ的確に区市町村の医療救護活動を支援できるよう、二次保健医療圏を単位とした災害医療体制を導入している。

災害時、主に重症患者を受け入れる災害拠点病院は、2018年4月1日現在で80カ所。それを142カ所の災害拠点連携病院と約430カ所の災害医療支援病院が支え、そのほか医師会・歯科医師会・薬剤師会などが連携に加わる。

災害時の情報連絡体制

災害時の医療機関における情報共有システムとして、厚生労働省が開発したEMIS(広域災害救急医療情報システム)がある。こちらは1995年の阪神・淡路大震災の教訓をもとに構築が始まったもので、2006年から運用が開始された。東西2カ所にバックアップセンターを持ち、都道府県や厚労省と全国の病院を結んでいる。

EMISは東日本大震災のように県境をまたぐような広域災害が発生したときに、全国規模で情報を共有することが主な目的として開発されている。東京都福祉保健局は、EMISの全病院導入までの情報連絡体制の強化を目的に、インフォコムの「BCPortal®」を導入した。

リアルタイムで「情報収集」「コミュニケーション」「情報共有」

BCPortalの主な機能を見てみよう。大きくは「情報収集」「コミュニケーション」「情報共有」に分けられる。まず「情報収集」では、質問したい項目を自由に作成し、入力された情報を即時に集計することが可能だ。例えば、災害時には被災の有無や怪我人の受け入れの可否などを医療機関が入力することにより、現在の状況を一覧で把握することができる。

写真を拡大 BCPortalの集計結果イメージ

もちろんこの機能は平時でも活用することが可能。現在、都では各病院に対して必要に応じて紙やファックスで様々なアンケートを実施しているが、この機能を使えば平時の調査などにも活用できる。

コミュニケーション面では、「グループトーク」を活用することにより、特定のメンバーによるチャット機能でのコミュニケーションが可能だ。こちらは特定のメンバーをグループ化ができるため、より詳細で密なコミュニケーションをとることができる。

一見すると「LINE」のような機能だが、「グループトーク」では「重要な情報」を送信者が選択することで、「既読・未読」表示だけでなく、確認者が能動的に確認ボタンを押す「確認・未確認」も選択でき、重要なトークが確実に伝達できたかを把握することができる。こちらも平時からの何気ない情報共有にも活用できるため、導入した企業では人気の機能だ。

写真を拡大 BCPortalの活用イメージ 東京都の13医療圏内にある650の医療機関をBCPortalが結んでいる

必要な時に必要な人とリアルタイムでコミュニケーション

最後が情報共有機能。こちらはいわゆる「掲示板」の機能だが、掲載する内容や用途に応じて複数の掲示板が作成できるほか、権限設定によりメンバー内でも閲覧制限をかけることが可能。必要な時に、必要な人と情報をリアルタイムで共有することができるのが特徴だ。

また、信頼性という部分ではBCPortal®は国内にサーバを保持しているため、トラブルが発生したときに日本の法律が適応される。今回の導入にあたっては掲示板やアンケートなどの「自由な項目設定」と、サーバが国内で運用されているという「信頼性の高さ」が高く評価されている。

情報共有で巨大災害に備える

都内の災害時の主なやりとりはEMISやファックスで行われており、訓練などでもその方式がとられていた。同局担当者は「ファックスだと情報の収集に時間を要する場合があり、災害時に刻々と変化する情報をより迅速に収集するかが課題になっていた。今後は、EMISとBCPortal®をうまく活用して補完しあうことで、首都直下などの巨大災害に備えたい」と話している。

(了)