BCPも業務である以上、予算内での実行が必要です(出典:写真AC)

■BCPを生かすも殺すも予算次第!?

角館カクオさんの会社は、BCPを策定してから7年が立ちます。東日本大震災が発生した2011年に社長の鶴の一声でBCP策定プロジェクトを立ち上げ、メンバー全員が明日は我が身と大地震の脅威を共有しつつ、目を血走らせてわずか3カ月で作り終えたものです。BCPが完成してからは、いわゆるBCMの運用指針にしたがって、定期的な見直しや更新などを行ってきましたし、一般的な防災レベルではありますが、教育や訓練も毎年欠かすことなく続けてきたのでした。

ところが、そこそこ順調のように見えても、内実はBCP策定に関わった誰もが見て見ぬフリをしている一つの問題があります。見て見ぬフリとは妙な表現ですが、さしあたってその問題に触れなければ触れないで、何も面倒なことは起こらないからです。しかしBCP事務局を担当するカクオさんとしては、このまま放置しておくと、なんとなく日に日に後ろめたい気持ちになっていく自分を感じるのでした。

ある日彼は、思い切ってこのことを社長に進言してみたのです。「社長、BCPのことなんですが、主要な対策のほとんどが"保留"となっています。当社のBCPはこれらの対策が導入・完了していることを前提に策定したものなので、このままでは絵に描いた餅で終わってしまうような気がします」。

社長はああ、そのことかという顔で答えました。「うん、頭の痛い問題だね。確かにこのままではいかんのだが、予算的にちょっと余裕がねえ…」。社長も心の隅では気になっていたようです。

■Planのキモは"対策保留案件"を絞り込むこと!

社長からこのように言われると、さすがにカクオさんもあまりリキんで主張するわけにはいきません。なにしろ大震災以降、カクオさんの会社は業績が十分に回復しておらず、以前に比べてBCMに充てられる予算が大幅にカットされてきているからです。かといって、この"保留案件"を放置していると、BCM自体の意義や目的まで薄れてしまうように思えるのです。

このジレンマを何とかしなければと思った彼は、いろいろと問題解決のための本を読み漁りました。その結果、現状を無理なく段階的に変えていくためにはPDCAを使ってみるのがよさそうだと悟り、さっそく着手することになりました。

まずは「Plan」の組立です。解決すべき問題は明々白々です。どうしたらお手上げ状態の"対策保留案件"のいくつか(すべてとは言いません)を無理のない予算で実現できるか、いつまでにそれを実施したらよいかということです。

このためにPlanの一環として、保留となっているBCP対策について、どの対策から実施すべきか優先順位と導入・実施時期を決めることにしました。これは危機対策本部メンバーに集まってもらい、さまざまな意見を参考にしなければなりません。カクオさんは全員に呼びかけます。

「現在、みなさんの手元にあるBCP対策のリストは予算の都合ですべて保留となっていますが、このまま放置することは好ましくありません。優先順位をつけて一つでも二つでも実現したいと思いますが、みなさんのご意見をお聞かせください…」。