片田特任教授は、行政への過度の依存を正すべきとした

消防庁と内閣府は6日、全国の市町村長を対象とした今年度「全国防災・危機管理トップセミナー」を東京都千代田区の全国都市会館で開催。236人が参加した。東京大学大学院情報学環の片田敏孝特任教授が「市町村長の危機管理対応について」と題し講演。大分県日田市の原田啓介市長は2017年7月の九州北部豪雨について語った。

片田教授は「行政主導の防災が進み、自分の命を行政にゆだね、住民の脆弱性が高まった」と説明。温暖化による台風の巨大化の影響もあり、今後も風水害被害が懸念されると指摘。2014年の台風8号の長野県南木曽町の土石流災害では土石流発生後に大雨・洪水警報が出ており、「予想できないような被害が生じることから、行政が指示し、住民が従うというスタイルは破たんしつつある」と述べた。さらに2017年の九州北部豪雨では異常を感じた場合、住民全員で逃げると判断したケースがあったことから「土砂災害や洪水では個人では判断が難しい。しかし地域でルールを決め、地域で判断するという、共助の力が自助の弱さを補う」と指摘した。

さらにキューバの防災事情を紹介。2005年のハリケーン「カトリーナ」では米国が1836人の死者を出したのに対し、キューバは0。災害時に避難命令が出ると医師も獣医も加わり、バスを利用して数百万人規模の避難を行うという、キューバの国が避難を支援し、国民自らも避難を行う、官民で徹底的な信頼関係と手を携えた行動を紹介。そして「行政が守る側、住民が守られる側でなく、自助・共助・公助が一体となって自然災害に立ち向かうべき」と述べた。

2017年の九州北部豪雨で3人が死亡するなど被害を受けた、日田市の原田市長は、2012年の豪雨の反省から、「自治会や防災組織育てるのが重要。行政と住民の信頼関係づくりが必要」と説明。発災時に対策本部会議をケーブルテレビで中継するなど情報公開を行い、市民の不安を抑えたことを紹介。そして次の災害に備え「避難情報発令は空振りを恐れてはいけない。過疎化での地域安全の確保へ住民自治組織の作成を進めている」と述べた。

消防庁からは中小河川における避難告知を知るための気象庁の「洪水警報の危険度分布」活用や、大規模災害時に消防団で臨時的に活動する「大規模消防団員」の活用、市町村の枠を越えた消防の広域化などが呼びかけられた。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介