大阪府内では出社停止や早期退社

一方の大阪府内における企業の動きについては、出社を止めたことと、早期退社を促していることが共通した傾向に見られる。田辺三菱製薬は、社員の安否確認後、自宅待機を指示。出社していた社員には、交通機関が復旧次第、帰宅するよう指示した。

大阪市の中央に本店を置く日本生命保険では、5千人の社員のうち出社は1~2割だったので、出勤が困難な社員には、自宅待機を指示した。三菱UFJ銀行はすでに出勤している行員が多く、帰宅が困難と思われる行員には早めの帰宅を促した。

大阪府北部の門真市に本社を置くパナソニックは、地震発生直後から電話とメールで出社の可否を判断するように通知。在宅勤務への切り替えや、有給取得を促した。また帰宅が困難となる社員に対しては早退を促し、非常食や毛布を準備して社内での宿泊も可能にした。

堺市堺区のシャープ本社では車通勤の社員が多く、相乗りで帰宅する社員が多かったという。三菱電機、ヤフー、ロート製薬、参天製薬などが入っているグランフロント大阪ではエレベーターが停止し、管理事務所が非常階段へ誘導するなどして混雑した。

外国人旅行客への対応に課題。企業によって対策の違いも浮き彫りに

4年前から、大阪市は危機管理室の主導で帰宅困難者対策について、大阪・難波・天王寺・京橋の各駅周辺を対象に、公共交通機関と地元との連携による帰宅困難者対策協議会を立ち上げ、検討会や訓練等に取組んでいた。しかし新大阪駅だけは、当該の東淀川区と淀川区が国から直接の助成金を受けてこの問題に取り組んだことで、市全体との連携や調整がされていないという不思議な状況にある。

今回の地震による被害は、大阪市よりも郊外の茨木市や高槻市の方が多く、ライフラインもこの地域での復旧に遅れが出ている。公共交通機関も2日でほぼ正常に戻り、通勤通学への支障がもう出ていない。

この様に、比較的被害エリアが限られていることや、大阪や京都周辺は、通勤エリアとして東京に比べて近い距離に居住する人が多く、1時間あればほとんどの通勤ができるという地理的な条件もあって、帰宅困難者対策を深刻に捉えていないのではないかと思われる。

帰宅困難者対策が優先的な扱いになっていない理由の1つは、ある大阪の大手企業のように、発災時間が午前9時前ということで、ほとんどの通勤者が電車の中か、自動車の運転中で動けなくなったため、会社との携帯電話でのやりとりで、出社しなくても良いという連絡を受けた人が多かったことだ。状況が分からず、とりあえず出社しようとした人たちが、夕方に帰宅困難者になったという。

百貨店を主として大型ショッピングビルの営業前ということもあり、推定されている大阪駅周辺の最大帰宅困難者予測42万人に比べると、駅周辺に滞った人数は少なかったことも幸いした。

それでも問題は、近年増加する外国人旅行者だ。大型ホテルは対応する機能をもっているが、小規模民泊から出てきて右往左往する外国人に対応する人が見えなかった。

京都駅や新大阪駅では修学旅行生も多かったが、どこでも改札前にブルーシートを敷いて休息する場所をつくりパニックになっていなかった。日本人の辛抱強さに頼っているわけにはいかないが、このような非常時に大騒ぎせず粛々と我慢して並ぶという風景は安心できる。

今回の地震で、帰宅困難者対策が、被災状況にもよるが企業によって大きな違いがあることが分かった。今後予想されている南海トラフ巨大地震発生時には、どのような対策が図られるのか、重大な関心が寄せられている。

(了)