公益財団法人日本ケアフィット共育機構

災害の現場で見落とされがちな介助技術と防災の専門知識とを兼ね備え、高齢者や障がい者をサポートできる人材育成を目指して創設された資格が、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が認定する防災介助士だ。「防災では自助、共助が非常に重要ですが、一般の人にはまだ十分に浸透していません。基礎的な防災力を身につけると自分や家族、大切な人を守れるようになる。民間レベルの防災力アップのために作られた制度が防災介助士です」と語るのは日本ケアフィット共育機構の理事・向笠高弘氏だ。


日本ケアフィット共育機構では、サービス介助士や認知症介助士の資格制度も設けている。サービス介助士とは、高齢者や障がい者をサポートするために必要な心構えと知識、介助技術を取得する資格で、有資格者は現在11万人を超え、金融、輸送、サービス業など業種を問わずさまざまな場面で活躍している。鉄道会社の職員が車いす利用者の乗降を手助けしているシーンをよく目にするが、その職員の多くもサービス介助士だ。このサービス介助士の資格を元に新たに設けられたのが防災介助士だというが、両者の違いはどこにあるのだろうか。 

「高齢者や障害のある方が街の中や日常の生活で困ったり、迷ったりしているのを手助けするのがサービス介助士。災害の現場で自由に行動できない高齢者や障害のある方をサポートするのが防災介助士です」と同機構の共育室室長でインストラクターも務める冨樫正義氏は説明する。「災害時に周りを見て、気遣いのあるサポートをするのが防災介助士ですので、より深い知識と技術が必要になります」(冨樫氏)。 

防災介助士の能力が発揮されるのは、例えば多くの人が集まる避難所だ。移動や搬送のサポートだけでなく、視覚障がい者に配慮して建物の壁に沿って通路を設定したり、車いすの通行に必要な通路幅を行政の担当者に提案できる。視覚・聴覚に障害のある方に対する情報の伝え方などについてもアドバイスやサポートできる点など多岐にわたる。 
「講義は実技教習による実体験を重視しています。高齢者の疑似体験や介助技術、搬送方法を身につけることで、現場で必要とされるサポートに自分で気づけるカリキュラムになっています」と向笠氏。防災介助士の資格取得にはテキストを用いた自宅学習から始まり、課題提出、実技教習を経た上で筆記試験に合格しなければならない。 

2011年の設立からこれまでに防災介助士の資格を取得者したのは自治体や企業の防災担当者、NGOやNPOの職員など数百人にのぼる。今年の6月には米国から自主防災組織(CERT:Community Emergency Response Team)の指導者を招き研修を行った。この研修には米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)によって標準化された市民向けの訓練プログラムを防災介助士のためにアレンジして利用した。

 「現場経験の豊富なCERTインストラクターの指導でレベルアップを図りました。米国は自己犠牲の精神ではなく、自分を守って初めて他者の手助けができるという考え方です。基本的な話ですが、装備も含めて十分な準備がないと対応しない。判断基準が明確になりました」と向笠氏はその成果を語る。 

東京消防庁などで職員に高齢者や要援護者に必要な配慮について講演も行っている冨樫氏は「高齢者や要援護者に気配りできる防災の専門家は少ない。防災はどうしても男性が中心になってしまう堅いイメージ。防災介助士は自分と家族、大切な人を守りサポートするファーストステップ。女性が防災に参加するきっかけにしてもらいたい」と今後の抱負を語った。


公益財団法人ケアフィット共育機構 防災介助士事務局
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