社員が安心して働くために充実機能とコストも決め手

総合広告代理店として宣伝戦略の立案から販売促進、大規模イベントのプロデュースなどを手がける京王エージェンシー。大規模な施設や設備を必要としない広告業で何よりも大切なのは「人」。そんな同社が、従業員の安心を重視してサイボウズスタートアップスの安否確認サービスを導入。機能を妥協せずに導入できる充実したサービスに加え、コストパフォーマンスに優れている点なども導入の決め手となった。 

京王エージェンシーが安否確認システム選定で糸口としたのは東日本大震災の実体験だ。当時は新宿駅近くの9階建てのビルの8階に入居。幸いにも怪我人はいなかったが、これまでにない揺れを経験し、家族が気がかりな従業員が帰宅を急いだ。震災当日、社員の安否確認の対応にあたった経営管理部課長の古川芳広氏は「公共交通機関の運転再開が不透明の中、社員に『帰宅は待った方がよい』と伝えたが家族が心配と帰宅する社員も多かった。私は家族とすぐに連絡がつき業務に専念できたが、連絡がつかなかったら経営管理部として社内に残って指示が出せたか疑問だった」と振り返る。 

この経験から、安否確認システムを選定するうえで重要視したのが家族の安否確認だった。サイボウズスタートアップのサービスには家族間のコミュニケーションを助ける「家族メッセージ」機能があり、家族なら誰でも掲示板にコメントを書き込め、メールでのメッセージ通知機能や書き込んだコメントの閲覧は家族に限定できるという点も魅力だ。

震災当日の社員の安否確認はメーリングリストと電話で実施。夕方までに8割の安否が確認できたが、外出中の一部の営業担当者とは電話がつながらず、ただ帰社を待つだけの対応となった。当日、帰宅者や社内に残った社員の名簿作成を担当した経営管理部サブマネージャーの京増多美恵氏は「名簿作成が手作業のため、確実に全社員の状況を把握できているか不安だった。サイボウズスタートアップスの安否確認の自動集計機能はその不安を解消できる魅力的な機能だった」と語る。「連絡状況の自動集計」機能は、画面をみれば怪我の有無や出社の可否などを一目で確認できる状況把握に適した仕組みとなっている。 

このほか、クラウド型システムの基盤となるサーバの分散設置や、爆発的な集中アクセスに対応するため今年2月に機能強化が予定されていた「地震発生時自動拡張機能」、気象庁の地震速報と連動した自動配信機能などの標準装備も、システム採用の大きな理由となった。 

「料金アップなしに必須な機能が全て入っており、妥協せずに導入できるのも魅力だった」(古川氏)。同社では、昨年末からトライアルを開始し、今年1月末から安否確認システムの運用を開始した。3月11日には初めての訓練を実施。訓練の狙いについて京増氏は「何よりも従業員に慣れてもらうため。もうひとつは訓練が集中すると予想された3月11日を選ぶことでシステムに支障が出ないか、確かめる目的だった」という。 

訓練当日、社員210名を対象に午前11時にメールを一斉送信。開始3時間で約80%が、夕方までに約95%が安否確認を済ませた。年配の社員もスムーズに入力できたのは、毎日利用しているサイボウズのグループウェアと同じデザインだったこともあり、抵抗感が少なかったためとする。 

今後も訓練を繰り返し安否確認サービスの定着をはかるとともに、発災時の情報収集や応急処置、事業継続を含めた経営層の意思決定をサポートする「対策指示機能」を使った上層部の訓練も盛り込み、災害に備えていくとしている。