地域コミュニティの活性化が真のテーマ

永田氏が現在、新しく取り組んでいるのがマンション防災だ。プラスアーツの活動を評価した首都圏の大手デベロッパーから依頼を受け、400戸~600戸クラスのタワーマンションの防災アドバイザーを請け負っている。備蓄品のセレクトから防災マニュアル作り、コンサルタント、防災啓発イベントの企画までを一気通貫で提供する。永田氏は大学卒業後に国内有数のゼネコンである竹中工務店に勤務した経歴を持つため、デベロッパーからの信頼も厚い。一つひとつ業務を請け負う企業はあるが、全てを1社で担える企業は少ないという。

マンションならではの問題点もある。一般的に高級マンションの住民は「サービス享受型」と考えられており、コミュニティの活動も、どちらかといえば積極的な「参加型」ではなく「受け身型」を好む傾向がある。永田氏はこれまでの取り組みから、住民巻き込み型の防災講座やイベントを実施するほか、防災マニュアルも「読みやすい、読みたくなる」ものを目指すなど、新しい形の防災コミュニティづくりを模索している。最近では神奈川県藤沢市で新しく開発されている、防災が1つのテーマとなっている1000戸クラスの町づくりにも取り組む。

阪神・淡路大震災では、さまざまなNPOが生まれた。しかし、震災の記憶の風化とともに、活動を停止するNPOも少なくない。こうしたなか、永田氏は、「私たちの真のテーマは、地域コミュニティの活性化。これまでの既成概念を崩し、防災を1つの軸にしながら、新しい形を創出したい」と話している。

 

NPO法人プラスアーツの「イザ!カエルキャラバン」の先進事例として、東京墨田区の下町に位置する一寺言問地区の取り組みが挙げられる。一寺言問地区は1985年に東京都の「防災生活圏モデル事業」に採択され、当時では珍しい住民主体の「一寺言問を防災のまちにする会」(通称:一言会)を発足。「100年先に残せる町」を目標に、これまでさまざまな防災活動を行ってきた。

 

一言会で「イザ!カエルキャラバン」を開始したのは2009年。昨年で6回目を迎えた。子どもたちだけで250人ほどが参加し、ファミリーの参加者を合わせれば400名以上と大盛況だったという。