Q.地区防災計画は広がり始めましたが、まだこの制度のメリットが理解されていません。
実際に災害を経験しないと分からない部分もあると思います。人々には日常の生活があり、防災は遠い世界の話になりがちです。考える機会もそれほどありません。我々はハードを整備しましたが、それだけで世の中は動きません。この制度を生かすソフトウェアは地域にあります。現状では制度の周知は不十分で理解を促す必要があります。

1つの提案ですが、見方を変えて地域で話し合う「場」を育てるきっかけとして地区防災計画を考えてみてください。住民同士で地域を歩いて考え、意見を出し合い、専門家のサポートを受け議論を交わす。こういった取り組みのプロセスで、防災意識や住民交流の大切さを共有できれば、この制度のメリットを感じてもらえると思います。

被災地では復興のために20年~30年先のまちについて何十回も協議会などで話し合いを繰り返しています。ゼロから街をつくり直すにはこうした議論が不可欠です。被災地に限ったことではなく、日常からこのような話し合いをしなければまちづくりは行えないと思うのです。逆に、平時からこのように住民が活発に参加する地域では、その影響が多方面におよび地域が活性化します。地区防災計画にはこういった二次的効果もあると思います。
 

Q.東日本大震災から4年が過ぎました。この4年間で防災対策が進み、災害に強い日本になったのでしょうか。
国の立場からみれば、さまざまな取り組みがなされ、ある程度の強化ができたと言えるでしょう。しかし防災対策に限りはありません。阪神・淡路大震災のときも同じように数々の法律を整備し、ハードとソフト両面の体制を整え防災は強化されたと思われました。しかし、約20年たって、あの東日本大震災の惨状が起きています。阪神・淡路大震災の頃から施設の耐震性は向上し、東日本大震災では当時より初動対応もそれなりにうまくいきました。でも、津波であれほど広範囲の被害を受けました。現地に物資を運ぶシステムすら整えていなかった。自治体からの要望をもとに、国が手配するシステムも当初はうまくいきませんでした。東日本大震災は地震、津波、火災と原発事故との複合災害が広域的に起こりましたが、首都直下地震や南海トラフ地震で別のシチュエーションがないとは限らない。日本経済に与えるダメージも甚大です。

災害を100%想定できると考えるのは思い上がりです。防災対策の実効性が検証できるのは災害が起こったときだけです。気を抜かずに一歩一歩進めるしかないと思います。
 

 【 Profile   原田保夫(はらだ・やすお)  
1977年東大法学部卒後、同年建設省入省。
土地・水資源局長、内閣府政策統括官(防災担当)等を経て2013年8月から国土交通審議官、14年1月から復興庁事務次官。15年3月に復興庁顧問に就任。
同年6月より現職。
 

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