(4)事業継続計画・マニュアル等の整備・見直し
感染が拡大した場合の対応を、事前に事業継続計画・マニュアル等にまとめておくことで、有事にスムーズな対応を取ることができる。

感染症対応の事業継続計画・マニュアル等を整備していない企業にあっては、早急にそれらを作成するとともに、従業員等にその周知を図ることが必要である。

SARSの流行や、2009年の新型インフルエンザの流行を経て、既に感染症に対する事業継続計画・マニュアル等を整備している企業については、これらの事業継続計画・マニュアル等がMERSにも適用できるか否か、見直しを行うことが求められる。また後述の通り、2013年4月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が施行されており、これを踏まえた見直しも必要である。

特に、2.今後想定すべき事態で取り上げたように、急速な感染拡大と共に発生国に対して渡航延期勧告等が発出される可能性があることから、感染拡大時の対応体制、備蓄品等の確認、出張に関するルールや、駐在員の帰国に関するルールを、自社として整理しておく必要がある。

(参考)新型インフルエンザ等対策特別措置法について

2013年4月13日、「新型インフルエンザ等対策特別処置法」が施行された。同法が対象と する「新型インフルエンザ等」には、新型インフルエンザや再興型インフルエンザ*1に加え、新感染症*2も含まれている。従って、MERSが、今後「新型 インフルエンザ等」とされ、同法の適用を受ける可能性も否定できない。

同法では、国や地方公共団体、また指定(地方)公共機関として指定された医療や輸送 等の公益的事業を営む法人等が、事前の体制整備を行うことを定めている。併せて、医療機関従事者や介護・福祉事業者、食料供給維持等に必要な食品製造・小 売事業者など、登録事業者の従業員等が優先的に予防接種を受けることが定められている。

また、新型インフルエンザ等が国内で発生し、甚大な影響を及ぼす可 能性がある場合には、政府が「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行い、国や都道府県が以下のような個別の対策の実施を検討・決定する。

・外出自粛要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示

・住民に対する予防接種の実施

・緊急物資の運送の要請・指示

・政令で定める特定物資の売渡しの要請・収容

・生活関連物資等の価格の安定等

更に政府は現在、新型インフルエンザ等対策ガイドラインの改訂を進めており、新型インフルエンザ等対策有識者会議が5月14日に、同ガイドラインの改訂案を公表している。

*1 かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているもの
*2  人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の 病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの

4.最後に


MERS(マーズ)コロナウイルスは現在、人から人への感染の可能性が指摘されており、WHOなどは今後の感染拡大を懸念している。従業員等の命、また事業継続のため、本格的な感染拡大の前に、できる限りの対策を講じていくことが肝要である。

             
〔2013年6月5日発行〕


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転載元:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 リスクマネジメント最前線2013 No.25
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社