2013/06/19
防災・危機管理ニュース
3.国外退避を念頭においたガイドライン等の検討について
企業が自社派遣者の国外への退避を決断するにあたっては、当該地域の状況が現地から日本本社に適時・適切に報告され、現地法人と日本本社が共通の認識のもとに立って退避判断を行うことが求められます。一方で、現地法人と日本本社で情報の共有が適切になされず、相互の認識が異なるような場合には、退避判断のタイミングの遅れに繋がる可能性があります。
よって、現地法人と日本本社間の、指示、報告、協議、意思決定に関わる役割のみならず、情報共有に関するルールや、国外退避の判断基準等を記載したガイドライン等を平常時から策定しておき、有事の際には、それらを基準としつつ、現状に即して対応を行うことが望ましいと言えます。以下、ご参考までに国外退避のガイドライン策定のステップを記載します。
(1)国外退避ガイドラインの策定ステップ全体像
(2)各ステップの概要
①ステップ1<要因の選定(暴動/戦争/疾病など)>
当該国において、退避が余儀無くされる可能性のある要因を選定します。要因の選定にあたっては、外務省の過去の危険情報の発出履歴や当該国の内政要因・外交要因・宗教的要因等を総合的に判断して選定します。
②ステップ2<退避方針の明確化>
退避するにあたっての基本的な事項を明確にします。
・退避手段(空路/陸路/海路)
・連絡手段(固定電話/携帯電話/SMS/e-mail/SNS)
・出国先候補
・退避対象者(全従業員/一部従業員/従業員の家族)、
・外部のセキュリティ専門会社による緊急退避サービスの使用有無、など。
③ステップ3<退避指示の発出基準の明確化>
退避を判断する責任者(およびその代行者)や、退避の判断基準を設定します。判断基準については、任意基準(例:「現地法人社長から退避指示があった場合に避難を開始する」など)のほか、客観基準(例:「WHOでフェーズ4が宣言された場合」など)を設けておくことが望ましいといえます。さらに、「退避指示による結果の責任は問わない」との文言を設け、早め早めの判断を促すことも有効と思われます。
④ステップ4<退避完了までの実施事項の洗出し>
会社の実施事項/従業員の実施事項に区分するなどして、「誰が、何をおこなうか」について検討し、明確にしておきます。
[検討事項の例]
・チケット等の手配を誰(どの部門)が行うか、
・出国先の選定を誰(どの部門)が行うか、
・避難者の優先順位付けを誰(どの部門)が行うか、
・集合場所の選定と周知を誰(どの部門)が行うか、
・空港までの移動方法を誰(どの部門)が決定し、周知するか、など。
⑤ステップ5<従業員とその家族への周知>
ガイドラインが策定されたあと、自社派遣者とその家族に対し、ガイドライン内容の周知を行います。また、新規に着任する派遣者およびその家族にも漏れなく周知します。
- keyword
- 海外リスク
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方