2.竜巻などの激しい突風を伴う気象現象の概要


(1)突風現象の種類
竜巻などの激しい突風に関して気象庁が発表する気象情報は、積乱雲に伴って発生して災害をもたらす激しい突風を対象としている。具体的には、「竜巻」や「ダウンバースト」、「ガストフロント」による突風である。後述する竜巻注意情報や竜巻発生確度ナウキャストの対象となる突風の強さは、藤田スケールでおおむねF0以上である。

①竜巻とは
積雲や積乱雲に伴って発生する鉛直軸を持つ激しい大気中の渦巻きで、漏斗状または柱状の雲を伴うことがある。地上では、収束性で回転性の突風や気圧降下が観測される。多くの場合、直径は数十~数百mで、数kmに亘ってほぼ直線的に移動するために、被害域は帯状・線上となることが多い。
②ダウンバーストとは
積雲や積乱雲から吹き降ろす下降気流で、地表に衝突し周囲に吹き出す突風である。地上では、発散性の突風やしばしば強雨・雹(ひょう)を伴うことがある。被害域は円あるいは楕円状となることが多い。吹き出しの広がりは直径数百mから10km程度である。周囲への吹き出しが4km未満のものをマイクロバースト、4km以上のものをマクロバーストと呼ぶ。
③ガストフロントとは
積雲や積乱雲から吹き出した冷気の先端と周囲の空気との境界で、しばしば突風を伴う。流れ出る空気の先端は冷気と周囲の暖かい空気との境界であり、突風を伴うことからガストフロント(突風前線)と呼ばれている。降水域から前線状に広がることが多く、数10kmあるいはそれ以上離れた地点まで進行する場合がある。地上では、突風と風向の急変、気温の急下降と気圧の急上昇が観測される。
④塵旋風とは
晴れた日の昼間に地上付近で発生する鉛直軸を持つ強い渦巻きで、突風により巻き上げられた砂塵を伴う。竜巻と違い積雲や積乱雲に伴わず、地上付近の熱せられた空気の上昇によって発生する。
⑤漏斗雲とは
竜巻と同様の現象だが、渦は地上または海上に達しておらず、地表付近で突風は生じない。

(2)藤田スケール(Fスケール)とは
1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士により考案された、竜巻やダウンバーストなどの突風により発生した被害の状況から風速を大まかに推定する風速のスケールである。被害が大きいほどFの値が大きく、風速が大きかったことを示す。気象庁によれば、日本ではこれまでF4以上の竜巻は観測されていない。