2014/02/12
防災・危機管理ニュース
2. 各国の対応
2014年1月23日9時(日本時間)時点における日本、豪州、英国および英国政府の対応を整理する。なお、21日にバンコクとその周辺に「非常事態宣言」が発令されたことから、今後、日本を含めた各国政府の対応が変化する可能性もある。常に最新の情報を入手し、安全確保に努めていただきたい。
2.1. 日本
外務省「海外安全ホームページ」では、2014年1月10日に「スポット情報」として「タイ:反政府集会デモの実施等に関する注意喚起(その3)」を発出し、最新情報の入手を促すとともに、反政府派の活動拠点やデモ行進、政治集会などには近づかないよう注意喚起を行った。また、22日には、タイ政府が「非常事態宣言」を発令したことを受けて上記の内容を更新し、「タイ:反政府集会デモの実施等に関する注意喚起(その5)」を発出した(※4)。渡航延期や退避勧告といった「危険情報」は発出されていない。
在タイ日本国大使館のウェブサイトでも同様に、17日現在の情報として、「爆発事案発生に関する注意喚起及び反政府勢力の動向(2014年1月17日現在)」が掲載された(※5)。また、「非常事態宣言」発令に伴う注意喚起も行われている(※6)。なお、同大使館では、メールマガジンに登録している在留邦人に対し、「緊急連絡メール」を配信するなどの情報提供も行っているため、駐在員やその家族、出張者などには強く利用を勧めたい。
2.2. 欧米諸国
豪外務省は22日、「十分な注意を要する(Exercise a high degree of caution)」としてタイ全土を対象に14日に発出した渡航情報(Travel Advice)の内容を一部更新した。英外務省も同日、15日に発出した渡航情報(Travel Advice)を更新している。米国務省は19日、豪・英外務省に続くかたちで渡航情報(Travel Alert)を発出し、タイに滞在する自国民に対し、同省がFacebookやTwitter上に発信する情報に留意するよう呼びかけた。
3カ国とも、日本の外務省同様、タイに滞在する自国民に対して、デモや集会には近づかず地元メディアなどを通じて最新の情報を入手するよう促すに留まっている。また、豪外務省および米国務省は2月2日実施予定の総選挙に言及し、選挙実施に反発する反政府派のデモが長期化することは避けられず、選挙当日に向けて今後も不安定な状況が続くと予測している。
豪州は特に、地理的にもアジアに近く、アジア諸国に関する詳細な情報を発信している。今回発出された豪外務省の渡航情報にも「首都封鎖」の状況に関する有益な情報が含まれているため、以下にその内容を簡潔にまとめる(表 2)。
表 2 豪外務省の渡航情報の概要と「首都封鎖」の状況(2014年1月22日9時(日本時間)現在)(※8)
注意喚起の内容 |
・ デモや政治集会には近づかない ・ 地元メディアなどから最新の情報を入手し、事態の推移を注意深く見守る ・ 特に「非常事態宣言」適用後は治安状況の変化や当局の対応に関する情報を収集する |
注意喚起の対象範囲 |
・ バンコクおよびバンコク以外におけるデモの発生場所(以下参照) ・ 選挙関連のイベントや大規模集会 |
反政府派の拠点とデモの発生場所(バンコク) |
バンコクにおける反政府派の拠点とデモの発生場所は以下のとおり ・ シーロム(Silom)通り/サラデーン(Sala Daeng)/ラーマ4世(Rama IV)通りの交差点 ・ アソーク(Asoke)とスクンビット(Sukumvit)通りの交差点 ・ ラチャプラソン(Ratchaprasong)交差点 ・ パトゥムワン(Pathumwan)交差点 ・ 戦勝記念塔(Victory Monument) ・ ラープラーオ(Lat Phrao)交差点 ・ チェーンワッタナ(Chaeng Watthana)の政府総合庁舎(government complex) ・ そのほかの政府機関庁舎や橋も一部デモ隊に占拠されている |
デモの発生場所(バンコク以外) |
プーケットやスラーターニー、チェンマイなどの観光地 |
公共交通機関の状況 |
・ 公共交通機関(スカイトレインや地下鉄)は通常どおり運行 ・ スワンナプーム国際空港およびドンムアン空港も通常どおり営業 |
治安当局の対応 |
・ バンコクとその周辺に「非常事態宣言」が発令されたことにより、政府が外出の禁止や集会の制限、建物へのアクセス制限などの強権を発動する可能性がある ・ 警察は、現時点では、催涙弾、放水銃およびゴム弾を使って抗議行動をコントロールしている |
2014年1月23日9時(日本時間)時点で有効の英国、豪州および米国政府機関の渡航情報については以下を参照されたい。
・豪外務省渡航情報:http://www.smartraveller.gov.au/zw-cgi/view/Advice/Thailand
・英外務省渡航情報:https://www.gov.uk/foreign-travel-advice/thailand
・米国務省渡航情報:http://travel.state.gov/content/passports/english/alertswarnings/thailand-travel-alert.html
※4 外務省海外安全ホームページ(アクセス日:2014年1月23日)
(URL: http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo.asp?id={%countrycd%}&infocode=2014C027)
※5 在タイ日本国大使館「爆発事案発生に関する注意喚起及び反政府勢力の動向(2014年1月17日現在)」2014年1月17日(アクセス日:1月20日)(URL: http://www.th.emb-japan.go.jp/jp/news/140117.htm)
※6 在タイ日本国大使館「非常事態宣言の発動に伴う注意喚起(2014年1月21日現在)」2014年1月21(アクセス日:2014年1月22日)(URL: http://www.th.emb-japan.go.jp/140121.pdf)
※7 写真提供:Sompo Japan Nipponkoa Brokers (Thailand) Co.,Ltd
※8 豪外務省の渡航情報を基に当社作成。
- keyword
- 海外リスク
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
過疎高齢化地域の古い家屋の倒壊をどう防ぐか
能登半島地震の死者のほとんどは、倒壊した建物の下敷きになって命を落とした。珠洲市や輪島市の耐震化率は50%程度と、全国平均の87%に比べ極端に低い。過疎高齢化地域の耐震改修がいかに困難かを物語る。倒壊からどう命を守るのか。伝統的建築物の構造計算適合性判定に長年携わってきた実務者に、古い家の耐震化をめぐる課題を聞いた。
2024/03/28
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月26日配信アーカイブ】
【3月26日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:四半期ニュース振り返り
2024/03/26
-
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方