BCMに挑む 

NTTスマートコネクト(本社:大阪市)

インターネットデータセンターを運用するNTT スマートコネクト株式会社(本社:大阪市)は、2月8日付けで、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際的な規格であるBS25999-2 を認証取得した。クラウドサービスの基盤となるデータセンターは、いまや重要なインフラとなっており、データセンターのファシリティ(建物、電力、空調)やネットワークの障害等を原因とした長時間の事業中断は、企業活動や社会活動に重大な影響を与える。そのため、同社では、災害だけでなく、伝染病、事故などの様々なインシデントが発生した際にも事業を中断することなく継続させるための仕組みづくりや教育・訓練に取り組んできた。全組織・全事業内容を対象とした同規格の取得は、データセンター事業者として国内初という。



NTT スマートコネクトの社員は全員がNTT 西日本からの出向社員。そのため、「そもそもインフラを守るという使命感は社員のDNA の中
にすりこまれています」と、同社代表取締役社長の岡本充由氏と経営企画部長の神山雅教氏は口をそろえる。

データセンター事業者として、これまでも予防保全の取り組みとして、いざ障害が起きた場合の対応などは徹底してきた。

それでも、改めてBCP(事業継続計画)の構築に取り組んだ経緯は、一昨年にパンデミックを引き起こした新型インフルエンザが1つの
要因となった。神山氏は「それ以前も社内でBCP の取り組みは検討されていましたが、少なくとも私が1年半前に着任してから大きなきっかけになったのは新型インフルエンザでした」と振り返る。

ただ、同社では、単にパンデミックを想定したBCP をつくるのではなく、地震や事故、交通網の麻痺、洪水など、幅広い脅威を想定したBCP を策定することにした。

神山氏は「新型インフルエンザ対策でBCP をつくるというだけで十分なのか、そもそも、どんな災害や事故、トラブルが起きても事業が継
続できる体制でないと意味がないと考えました」と語る。

そこで、幅広いリスクに対応したBCP を策定するとともに、それを組織文化として定着させるための仕組みとしてBCMS を採用すること
を決定。「BCP を作っても一過性で終わってしまったら意味がありません。仕組みとして継続されるということが非常に大切です。(神山氏)。

もう1つBCMS を構築した大きな理由は、人事への対応だ。NTTスマートコネクトは設立10 年と、まだ比較的新しい会社だが、社員は全員がNTT 西日本からの出向社員。神山氏によれば、これまでは、会社の立ち上げ当初から長く勤めてきた社員の力量に頼る割合が比較的多かったが、これからは3〜4年で社員を入れ替えていく時期を迎えるという。

「技術力やスキルが継承できないことも大きな事業リスクと考えたとき、地震などの災害だけではなく、人が入れ替わっても事業が継続できる仕組みは必要条件なのです」(神山氏)

3つのBCP

地震など特定の災害を想定してBCP をつくる場合、その地域で発生しうる地震の発生確率や予想される影響を調べ、それにより自社の経営資源がどのような被害を受けるかを予測し、そのような事態でも事業を継続するための戦略を立てるといった作業を行う。一方、NTT スマートコネクトが策定したBCP は、「結果事象」と呼ばれ、特定の災害を想定する原因事象ではなく、様々な災害・事故が起きても結果的にもたらされる影響に対して事業継続戦略を立てている。

「特定のインシデントを想定すると、いくつシナリオを作っても、きりがありません。最大公約数というと誤解があるかもしれませんが、いろんなインシデントを想定する中で、結果として、どういう状況になるかを捉えて、それに対する対策を考えるという形を模索することにしたのです」(神山氏)

具体的に、同社が策定したBCPは以下の3つだ。

1つは、地震災害などでデータセンターあるいは事務所に人が立ち入れなくなったことを想定したBCP。
2つ目は、要員が一定レベルまで減少した場合のBCP。
3 つ目は、データセンターからインターネットに接続するバックボーンネットワークが完全に停止してしまった時のBCP。

データセンターや事務所に人が立ち入れない時のBCP は、地震や事故などでビルへの入館が制限されるようなケースを想定している。対策のポイントは2つある。1つは、いつ何時でも、社員や経営層が連絡を取り合える連絡体制の仕組みの構築。もう1つは、遠隔で仕事ができるのかできないのかを即座に確認し判断するということ。もともと同社は、顧客サポートや問い合わせ対応、メンテナンスなど、データセンターや事務所以外の場所からも遠隔で対応できる仕組みは整えている。

ただし、どのような事態のときに遠隔対応に切り替えるのか基準や手順が明確に定まっていなかったという。そこで、遠隔対応に切り替えるか否かを速やかに判断し、遠隔対応ができるなら手順に従って対応にあたる。できない場合は代替施設に集まり対応にあたることにした。この際、前提としてデータセンターそのものが被災することは考えていない。「私どものデータセンターは、もともとNTT の通信ビルとして建設された建物で阪神大震災クラスにも耐えられる強度を持ちます。あまりに現実的でない被害想定をつくるよりは、起こりうることに対して確実に実行できる体制を整えることが重要です」(神山氏)。それでも仮にバックボーンネットワークの機能が停止した場合は3つ目のBCP を発動する。「一番起きてもらいたくない事象ですが、最悪のシナリオとして、やはり考えておこうということになりました」(神山氏)。

このケースでは、復旧を急ぐことはもちろんだが、まず、顧客への状況説明と謝罪を最優先に行う。誰に対していつまでに、どのように連絡を取る必要があるのかを明確にしたという。

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