②組織・人員及び責任体制
a)安全管理システムは、経営層のコミットメントと企業の安全文化を反映したものであるべきで、重大な危険に関係する、組織内の全ての階層の人員について、役割とその責任を定めた形で表されていなければならない。
b)安全に影響を与える業務を管理、実行又は確認する全ての者について、その役割、実行責任、説明責任、権限、相互関係を明確にしなければならない。特に下記業務を担当するスタッフについては重要である。
・安全管理システムの構築と実行に必要なリソース(人的資源を含む)の準備・提供に関わる業務
・従業員に危険の認識及び安全方針の遵守を確実に行わせるための各種取り組み
・改善事項の抽出、記録、フォローアップに関わる業務
・新設施設・設備・機器の設計及び改造に関連する業務
・緊急事態を含む非定常状態における対応業務
・教育訓練(企画、実施及び実施後の評価と効果検証)に関わる業務
・安全管理システムの運営に伴う調整業務
・経営層への報告業務
c)業務手順書等により、各業務をどのように行うかについて定め、次のような項目を明確にしておくことが重要である。
・誰が
・何を
・どのように
・いつ
・期待される結果

③リスクアセスメント(ハザード解析とリスク評価)
a)リスクアセスメントでは、プロセス及び取扱物質(原料から製品まで)に潜在するハザードを体系的に把握し、そのリスクを評価する手順を構築し実行することが求められる。この手順は正式に承認されたものである必要がある。また、手順は体系的に整理され、安全対策を検討する上で重要な手順であると位置づける必要がある。
b)リスクアセスメントは、以下の全てに適用することが望まれる。
・プラントの計画、設計、エンジニアリング、建設、試運転の各段階
・新規プラント・設備などの開発段階
・定常運転時
・非定常作業時(スタートアップ、メンテナンス、シャットダウン等)
・設備故障、外部要因、ヒューマンファクターなどを起因とする事故及び可能性のある緊急事態
・事業中止(設備停止措置、廃棄、売却など)に伴う危険性
・従来の活動から認識している潜在的な危険性
・自然災害(地震、強風、洪水、高潮、異常高温・低温等)
・積載及び荷降しを含む輸送作業に伴う危険性
・近隣コミュニティの活動による危険性、悪意又は許可されていない行動等の外的危険性
c)リスクアセスメントでは、社内外における過去の事故事例、関連施設又は類似施設の運転経験、保安検査及び安全監査から得られた教訓を十分に反映することが重要である。社外の事故事例については下表のデータベースが参考となる。

表3 日本国内の代表的な事故事例データベース

名称 URL
危険物保安技術協会 危険物総合情報システム https://www.khk-syoubou.info/sougou/
独立行政法人産業技術総合研究所
リレーショナル化学災害データベース
http://riscad.db.aist.go.jp/index.php
高圧ガス保安協会
高圧ガス事故事例データベース

https://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/hpg_incid
ent/incident_db.html

https://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/index.html

経済産業省
都市ガスの安全(事故事例以外の情報も含む)
http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/itir
an/new_citygas_index.html
中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター
労働災害事例/死亡事故災害事例データベース
http://www.jaish.gr.jp
独立行政法人 製品評価技術基盤機構
製品安全分野 最新事故情報
http://www.jiko.nite.go.jp/
畑村創造工学研究所 失敗知識データベース http://www.sozogaku.com/fkd/
損害保険料率算出機構 事故災害データベース http://www.giroj.or.jp/service/databank/database/index.html
労働安全衛生総合研究所
爆発火災データベース
http://www.jniosh.go.jp/oldsite/results/2013/0218/index.html
消防防災博物館
火災・事故防止に資する防災情報データベース
http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/bousaiinfo/index.cgi

表4海外の代表的な事故事例データベース

名称 URL
European Commission / Joint Research Centre
eMARS(Major Accident Reporting System)
https://emars.jrc.ec.europa.eu/
https://emars.jrc.ec.europa.eu/?id=4
CSB(The US Chemical Safety Board 米国) http://www.csb.gov/
OSHA ( The US Occupational Safety and Health
Administration 米国)
https://www.osha.gov/oshstats/
https://www.osha.gov/pls/imis/accidentsearch.html
CCPS(Center for Chemical Process Safety 米国)
PSID(Process Safety Incident Database)
http://www.aiche.org/ccps/resources/psid
IchemE(Institute of Chemical Engineers 英国) http://www.icheme.org/
FACTS
(Failure and Accidents Technical information System)
http://www.factsonline.nl/

d)ハザード解析手法は、プラントの種類、ハザードの大きさや特性によって異なるため、適用する手法と解析実施チームに参画する専門家を決めておく。解析にあたっては、運転ミスや安全装置の不具合などを含めた潜在的なハザードを把握するために、専門的かつ幅広い視野で確認する必要がある。そのため、技術部門・保全部門・環境保安部門等、多角的に参画者を選定することが重要である。解析手法としては以下のようなものがある。
・チェックリスト
・What-If
・What-If/チェックリスト
・HAZOP (Hazard and Operability Studies)解析
・FMEA (Failure Modes and Effects Analysis)
・FTA (Fault Tree Analysis)
・ETA (Event Tree Analysis)
e)リスク評価にあたっては、検討対象に見合った事故シナリオを十分に検討することが重要である。シナリオは、施設内外の人及び環境に対する最悪な事態(ワーストシナリオケース)を含み、事故防止対策及びその影響軽減方法の適切さを評価できるものを採用することが望まれる。

なお、弊社インターリスク総研で提供可能なシミュレーションを活用した影響評価計算ツールの例を以下に示す。施設内外への影響評価や軽減効果の検証などに活用可能である。
・蒸気雲爆発による爆風圧計算
・火災を想定した輻射熱計算
・化学物質の漏洩拡散計算