2018/09/07
東京2020大会のリスク対策
東京2020大会の安全対策は、大会関連施設の安全確保だけではなく、ソフトターゲットの警備やテロ発生時の対処能力の向上も忘れてはいけません。2012年のロンドン大会は約220の国と地域で36億人が中継放送を見ました。これだけの注目を集める大会でテロが起これば、世界的なインパクトが大変大きい。もちろんテロの未然防止には万全を期さなければいけませんが、発生もありうると考えるべきでしょう。発生を前提に対処能力を向上させて被害を最小限にとどめ、テロリストの狙った効果を出させないという視点も大事です。
テロ防止の基本はどんな脅威と脆弱性があるかの評価から始まります。これは一企業単位ではではなかなかできるものではありません。警察とも連携して脅威を評価し、それにもとづいたセキュリティレベルを設定し、それを維持できるかどうか、そのためにはどうすべきかを考えていく必要があります。
脅威は常に変わっていくものです。最近では車で群衆に突っ込むといった手口が多発していますが、車止めを用意するといった変化への対処が必要となります。何か対策を行ったら、その結果について検証し、また次の行動に生かすためにPDCAを回しましょう。テロリストは私たちが想像しないような方法で攻撃をしかけてきます。それに全方位で守るということは難しいです。何か起こった時は救護などを行うことで被害拡大を防止し、最小化を行います。そのためには平素の準備は大事です。
2008年に北海道洞爺湖サミットが開催されました。この年にできたのが「テロ対策東京パートナーシップ」です。警視庁を中心に官民59機関が参加しています。ここでは(1)合同訓練(2)合同パトロール・キャンペーン(3)検討会・研修会等(4)テロ情報ネットワークの構築(5)非常時映像伝送システムの構築(6)テロ対策相互協定の締結-の6つに取り組んでいます。このパートナーシップでの取り組みを通じ、大規模施設の安全マニュアルのほか、中小企業のためのテロ対策マニュアルも作成しました。中小企業で共通したもののほか、事業別に注意すべき点もまとめています。
東京駅においてもパートナーシップを組織しています。東京駅はJR東日本・東海に東京メトロと駅長が3人いて、地下街や大きな商業ビルも多い。災害対策では連携の仕組みができていましたが、テロ対策についてはまだ決して十分ではありませんでした。そこで、警視庁が中心となり、東京駅を協力して守るよう様々な分野の事業者が取り組んでいます。複合テロ想定訓練として、警視庁の担当者も交えて研修や図上演習も行われました。テロ対策はこのように関係者全員一丸となって行うべきもので、ほかのターミナル駅にとっても大いに参考になると思います。
(了)
- keyword
- 東京五輪
- 東京2020
- 東京オリンピック・パラリンピック
東京2020大会のリスク対策の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方