アクションプランで数値目標を明記 地域計画策定ガイドラインも公表

写真を拡大都内で講演する古屋圭司国土強靭化担当大臣

政府はこのほど、国土強靭化基本計画を閣議決定した。

政府の地震調査委員会が今後30年以内に70%以上の確率で発生すると公表した南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模災害が発生しても、人命保護や政府などの重要機能の維持、被害の最小化、迅速な復旧復興することなどを目標に掲げ、ハード・ソフトの両面から行うことを骨子としている。

有事だけでなく、平時にも有効に活用され、結果として国の経済成長戦力にもつながる取り組みとして、国の政策のあらゆる場面に関係する。古屋圭司国土強靭化大臣は6月6日に都内で講演し、同計画について「私は初代の国土強靭化担当大臣。真っ白なキャンパスに思うような絵が描けた」と胸を張った。

計画は国土強靭化に関して防災や国土形成、エネルギー、社会資本整備などの全ての国の基本計画の上位に立つ「アンブレラ計画」。「行政機能/警察・消防等分野」であれば政府全体の業務継続計画を踏まえた対策を、「住宅・都市分野」であれば密集市街地の火災対策や住宅、学校などの耐震化など、脆弱性評価結果を踏まえた15の施策分野に対して具体的な推進方針(プログラム)を打ち出した。

同時に公表した「国土強靭化アクションプラン2014」では具体的なKPI(重要業績評価指標)と担当省を定めた。例えば住宅の耐震化率は国土交通省が2008年に79%だったものを2020年までに95%に、大企業のBCP策定割合は内閣府が2020年までに100%にそれぞれ高めるなど目標を明記することで、プログラムを確実に進捗させる。基本計画は5年ごとに、アクションプランは1年ごとに見直し、PDCAサイクルの繰り返しによるマネジメントを行うことも定めた。また、「特に配慮すべき事項」の中に「民間投資の促進」や、「BCP/BCMなどの策定の促進」、「データベース化、オープンデータ化の推進」なども明記。民間投資の促進の中では官民の連携による推進を促している。

国土強靭化基本法は、地方公共団体が国土の強靭化に対して大きな責務を担うことも盛り込み、地域に対しては「国土強靭化地域計画策定ガイドライン」を策定した。基本計画と同じく、地域強靭化計画も地域の全ての計画の上位に位置するアンブレラ計画であるとの位置づけのもと、基本計画と調和しながら都道府県または市町村が主体となり、地域の特性を考慮しながら策定していく。広域災害などに備えるため区域外の地方公共団体や民間事業者など、関連団体との連携・協力も重要としている。

内閣官房国土強靭化推進室では、国土強靭化地域計画策定モデル調査に関わる実施団体を募集しており、応募があった28件から、このほど12団体を選定し発表した(①北海道、②千葉県旭市、③東京都荒川区、④新潟市、⑤山梨県、⑥岐阜県、⑦静岡県、⑧愛知県・名古屋市、⑨和歌山県・和歌山市、⑩徳島県、⑪高知県・高知市、⑫長崎県)。

古屋大臣は「今回の地域計画では、事業の優先度に対して市町村の議会を説得しなければいけないなど、知事の責任が非常に大きい。ぜひリーダーシップを発揮して、地域で国土強靭化を推進して欲しい」と話した。

「国土強靭化アクションプラン2014」で示された主な重要業績指標

【国交】住宅・建築物の耐震化率 住宅:約79%(H20)→95%(H32) 建築物:約80%(H20)→90%(H27)

【国交】市街地等の幹線道路の無電柱化率 15%(H24)→18%(H28)

【国交】首都直下地震又は南海トラフ地震で震度6強以上が想定される地域等に存在する主要鉄道路線の耐震化率 91%(H24)→概ね100%(H29)

【国交】大規模盛土造成地マップ公表率 約4%(H25)→約50%(H28)

【国交】防災対策のための計画に基づく取組に着手した地下街の割合 0%(H25)→100%(H30)

【国交】地震時等に著しく危険な密集市街地の解消面積 0ha(H23)→5,745ha(H32)

【国交】建築物の耐震化率 約80%(H20)→90%(H27)(再掲)

【厚労】全国の災害拠点病院及び救命救急センターの耐震化率 73%(H24)→81.2%(H26)

【厚労】社会福祉施設の耐震化率 84%(H24)→94.5%(H30)

【国交】津波防災情報図の整備 20%(H25)→100%(H27)

【国交・農水】最大クラスの津波ハザードマップを作成・公表し、防災訓練等を実施した市町村の割合 14%(H24)→100%(H28)

【国交】緊急地震速報の精度向上(震度の予想誤差が±1階級におさまる割合)79%(H24)→85%(H27)

【国交・農水】東海・東南海・南海地震等の大規模地震が想定されている地域等における海岸堤防等の整備率(計画高までの整備と耐震化) 約31%(H24)→約66%(H28)

【農水】防災機能の強化対策が講じられた漁村の人口比率 49%(H23)→概ね80%(H28)

【国交】内水ハザードマップを作成・公表し、防災訓練等を実施した市町村の割合31%(H24)→100%(H28)

【国交】洪水ハザードマップを作成・公表し、防災訓練等を実施した市町村の割合62%(H24)→100%(H28)

【国交】下水道による都市浸水対策達成率 約55%(H24)→約60%(H28)

【内閣府】具体的で実践的な避難計画の策定率(火山) 13%(H24)→100%(-)

【国交】土砂災害から保全される人家戸数 約108 万戸( H24 ) → 約114万戸(H30)

【国交】社会経済上重要な施設の保全のための土砂災害対策実施率(重要交通網に係る箇所) 約47%(H24)→約51%(H28)

【農水】決壊すると多大な影響を与えるため池のうち、ハザードマップ等ソフト対策を実施した割合 3割(H24)→10割(H32)

【総務】全国瞬時警報システム(J-ALERT)自動起動装置の整備率 93%(H25)→100%(H26)

【総務】公共情報コモンズの都道府県の導入状況 32%(H25)→100%(H28)

【総務】AM 放送局(親局)に係る難聴対策としての中継局整備率 0%(H25)→100%(H30)

【国交】地震の規模等の提供に要する時間 300分(H24)→3分(H26)

【国交】外国人旅行者に対する災害情報の伝達に関する自治体向けの指針の周知0市町村(H25)→1,700市町村(H30)

【国交】大規模地震が特に懸念される地域における港湾による緊急物資供給可能人口カバー率 59%(H24)→64%(H28)

【厚労】上水道の基幹管路の耐震適合率 34%(H24)→50%(H34)

【農水】応急用食料の充足率 毎年100%を維持

【経産】避難所となり得る施設への石油製品貯槽の配備率 31%(H25)→100%(H30)

【国交】広域的支援物資輸送訓練実施箇所率 33%(H25)→100%(H29)

【内閣府】大企業及び中堅企業のBCP の策定割合 大企業:45.8%(H23)→ほぼ100%(H32) 中堅企業:20.8%(H23)→50%(H32)